きらきらきら



「すっかり夏ね……」


照りつける太陽、分厚い雲、温い風。
黙って立っているだけでも、じとっと汗が肌を伝う。
眩しい━━。
目を細め空を見上げる。
彼らは元気だろうか。
空を見上げるといつも思うこと。


「カスミちゃん」

「あら、こんにちはおじさん」

「今日も暑いね〜。ジムは休みかい?」

「ええ」


パタパタと団扇を扇ぐおじさんは、熱気で揺らぐ道の向こうを見つめた。


「こう暑いのに、若者は元気なものだよ」

「?」

「いやね、公園でバトルしてた子たちがいてね。もしかしたらジムに挑戦に来た子かもしれないよ。まだやってると思うから、行ってみたらどうだい?」


おじさんは微笑んだ。
バトルか━━。
暇もあるし見に行ってみようか。
おじさんに手を振り、カスミは公園へと足を向けた。


****


公園に近づくたびに大きくなる音に、心は少し躍った。
やはりバトルは好きだ。
観るのも、やるのも。
公園の外まで爆音が響いているから、なかなか激しい戦いになってるのかもしれない。
どんな人がどんなポケモンでバトルをしているのだろう。
水タイプだったらいいな。


「ん……まぶし……!」


公園に足を踏み入れると、噴水が太陽の光に反射してきらきらしていた。
思わず目を細め、手で影を作る。
その向こう側でバトルをしているのが見えた。
きらきらと眩しく輝くその姿。


「あ……」


小さな瞳とぱちり目が合う。
しー、とカスミが人差し指を口元に当て微笑むと、意図を理解してくれたようで、こくんと可愛らしく頷いてくれた。
そう、今はバトルの真っ最中。
邪魔はできない。


「ふふ……。本当変わらないんだから」


太陽のように眩しく、きらきらと輝く。


「リザードン、火炎放射だ!」


炎が勢いよく相手を包んだ。
勝負あり。
カスミはふと笑った。


「やったぜリザードン!」


バトルをしている時もきらきら、勝って喜ぶ時もきらきら。
眩しいな。
カスミは胸の前でぎゅっと拳を握った。
締めつけられるようなこの痛みは、とても愛しいもの。


「見てたかピカチュウ!」

「ピカ!」

「え、ピカチュウ!?どこ行くん……だ……よ……」

「ピッカ!」


ぴょんと胸に飛び込んできたピカチュウを抱きしめる。
久しぶりの温もりを、カスミは大切に撫でた。


「カスミ……!」

「久しぶりね、サトシ!」


驚くサトシの額をピンと弾く。
また背が伸びているのが何となく腹が立つ気がして、カスミは吹き出してしまった。
不思議そうに首を傾げるサトシの頬をびにょんと引っ張る。


「あたしより背が高いなんて、ムカついて笑っちゃったわ」

「何だよそれ……。カスミはさらに暴力的になったんじゃないか?」

「失礼ね。サトシがここにいるって実感したかったんじゃない。ね、ピカチュウ、リザードン」

「ピカチュ!」

「グォ」

「お前ら……」


カスミは笑った。
うん、確かにサトシだ。
とても嬉しい気持ちでいっぱいになる。


「サトシ」

「ん?」

「お帰りなさい」

「あぁ、ただいま」


とびっきりの、きらきら笑顔。
きゅーんと胸の奥が心地よく痛む。
眩しくて眩しくて、涙が溢れた。


「カスミ?」

「サトシが輝いて見える……」

「え、何て?」

「かっこよくなって帰って来るなんて反則って言ったの!」


もう、と睨む。
サトシは目をぱちぱちと瞬かせた後、おかしそうに笑った。


「カスミ」

「何よ……」


小さく手招きされる。
一歩サトシに近づくと、腕の中にいたピカチュウがリザードンの背へ飛び移った。
何だと思う間もなく。
気づけばすぐ近くにサトシのきらきら笑顔。
頭を引き寄せられ、額に優しいキスが落ちた。
きらきらきら、涙が舞う。
目を閉じたのに、涙のせいでいつまでも眩しいままだった。



−−−−
爽やかを目指して。
ポケソング聴きまくってできた話です。
バトルフロンティアとサイコー・エブリデイ!、心のファンファーレ、七色アーチをずっと繰り返して!
サトカスの再会話は何度書いてもいいわ……!
お付き合いくださり、ありがとうございました!

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