いつもの愛情表現



どうしてこうなった。
その状況に、タケシは頭を抱えた。



「ピィカ……」

「ウ、ウ〜……ア、ア、アー……」



不思議そうに首を傾げるサトシと、発生練習のような事をしているピカチュウ。
のように見えるが、実際は逆。
逆というのもおかしな話ではあるかと、ややこしい事態にタケシは思考を止めたくなった。


「中身が入れ替わるなんてな……」

「ピカチュ……」

「ウ〜……」



『魂が入れ替わったのじゃ!』
と、見るからに怪しい祈祷師が言っていた。
サトシとピカチュウに不運が起きるとか何とかまくし立て、事が起き、そら見たことかとしたり顔。
治してやろうと莫大な金を請求されるも、子供がそんな大金持っているはずがない。
ならば親にと言い出した時、後ろにエスパーポケモンが数種いるのが見えた。
すかさず問いつめると、怪しい祈祷師はテレポートを使って逃げてしまった。


「カスミがジュンサーさんを呼びに言ってるから、取りあえず事情を話そう。あの手口からすると、今までも同じ事をしていたはずだ」

「ピカチュウ!」

「ウ〜……た、けし……」

「ん? サトシ、喋れるのか?」

「う、ん……。なん、とか……」

「そうか……。ピカチュウの口は人間の言葉を話せるようには出来ていないだろうからな。舌ったらずだが、それだけでも十分すごいぞ? そう考えると……ニャースは人の言葉を話せるようになるまで相当な努力をしたんだろうなぁ……」

「ニャースはどうでもいい」

「淀みない!?」


ピカチュウから人の言葉が発せられるとは。
入れ替わっただけでも摩訶不思議だが、事情を知らぬ者からしたら、このピカチュウは学会報告だけでは済まなさそうだ。


「ピカチュウは何か喋らないのか?」

「ピィカ?」


ピカチュウは人の言葉を話すつもりはないらしい。
それとも、口や舌の動きができないだけなのか。
どちらにしろ、ピカチュウはそれほど戸惑ってはいないようだ。
寧ろ、初めての感覚を楽しんでいるように見える。


「ピカピ!」

「ピカチュウ?」


ピカチュウがサトシを抱き上げる。
いつもサトシがそうしてくれるように。


「ハハッ、見た目だけなら何も変わらないんだがな」


相当嬉しいらしい。
ピカチュウは感触を確かめるように、ぎゅっと自分の体を抱きしめている。
そんな様子だからか、サトシもふと微笑んだ。


「ピカピー」

「なん、だ、ピカチュウ」

「ピカピー!」


うんうんとタケシは頷く。
例え中身が入れ替わろうが、サトシとピカチュウの関係は変わらない。
これなら何も問題はないだろう。



「タケシー!」


「お、サトシ、ピカチュウ。カスミが戻ってきたぞ」


タケシは駆けてくるカスミに手を振り、居るだろう存在を目で捜す。
が、確認できない。


「お待たせ」

「お待たせって……ジュンサーさんは?」

「ここに来る途中、あの怪しい祈祷師見つけてね。ジュンサーさんはそいつ追いかけてったわ」

「そうか……」

「何落ち込んでんのよ。やっぱり他にも被害あった人いるみたいで、指名手配されてたわ。でも、一日経てば自然と戻るみたい」


良かったね、とカスミはサトシの姿をしたピカチュウを見る。
ピカチュウはあどけない表情で小首を傾げた。


「ピカチュピ」

「ん? どうしたのピカ……チュ……!?」

「うおぉぉぉぉぉピカチュウぅぅぅぅぅ!?」


それはもうガバッと。
ピカチュウは勢いよくカスミに抱きついた。
普段優しく包み込んでくれるカスミを、今度は自分がと思っているのだろうか。
カスミもピカチュウだと理解はしているが、体はサトシのものなのだ。
真っ赤になって押し黙っている。
サトシはサトシで、自分の体がカスミに抱きついているのを見るのは耐えられないのか、カスミと同じように真っ赤になりながら必死に小さな手を動かし止めろと訴えている。
タケシは微笑ましげに笑った。


「たけし、わらってないで、なんとかしてくれ……!」

「まあまあ、ピカチュウなんだし」

「ピカチュピー! ピカピーカ!」

「〜〜〜〜っ!」


賑やかな声がこだました。



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無理やり終わらせた感ありありと(笑)
シンジと入れ替わり話は個人的に楽しかったので、ピカチュウともやってみた。
ピカカスなんだかサトカスなんだか。
ホントは、カスミがご飯をはいあーんで食べさせたりとか考えていたけれど……。
収拾つかなくなりそうで断念!
機会があれば書きたいと思います。
お粗末さまでした!

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