魅力的なきみ



青に浮かぶの続きです。



それはそれは感動的な再開だった。
目が合った瞬間、笑いあって駆け寄って。
大好きな人の腕の中に飛び込んだのは、当然ながらピカチュウだった。


「ピッカ〜!」

「久しぶりねピカチュウ!」


とても楽しみにしていたのは知っていたけれど、正直驚いた。
ピカチュウがサトシ以外の人にあんなに幸せそうに擦りよるなんて。
出遅れて呆けているサトシを見れば、ピカチュウはカスミが大好きだからなあ、と苦笑した。


「久しぶりだな、カスミ」

「タケシ!本当久しぶりね〜」


タケシとカスミが再開を喜びあっている。
私はどうしたらいいかわからない様子のサトシの背中を押してあげた。
なーに照れてんのよ!そう言えば、照れてない!なんて顔を赤くするから。


「サトシ!」

「あ、か、カスミ……」

「久しぶりね!元気だった?」

「あ、ああ……。カスミも、元気そうで」

「はじめましてカスミ!あたしヒカリ!」


サトシの言葉を遮ってカスミの手をギュッと握る。
目をぱちくりさせて驚くサトシに、ザマーミロ!なんて意地悪く笑ってやった。

それから後はもう大変。
止まることのない会話が続いた。
私の知らないサトシとタケシの話をカスミから聞いて、カスミの知らないサトシとタケシは私が話す。
すっかり仲良しだな、とタケシが笑ってくれてすごく嬉しい。
だって、思った通りの素敵な子だったんだもの!
ニコッと笑えばカスミもニコッと返してくれるけれど、笑顔じゃないのが約一名。


「何拗ねてるのよ、サトシ」

「拗ねてねー!」

「拗ねてるじゃない。ねぇ、カスミ?」

「そうね。サトシは本当しょうがないんだから。ヒカリから話を聞く限り、ちょっとは成長したと思ったんだけど。やーっぱり、お子ちゃま」


ねー!なんて同意すると、サトシはますます不機嫌そうに眉を寄せ、それが可笑しいのかタケシは吹き出してしまった。
カスミの膝の上にいるピカチュウまでもが笑っているのだから、私は笑いを堪えるのに必死だった。さすがに可哀想かな。
明日はサトシにカスミを譲ってあげる。
そう言おうと口を開けた瞬間、サトシは勢いよく立ち上がりテーブルを叩いた。
あ、怒っちゃった?
サトシの顔を覗き込むと、


「カスミ!久々にバトルしようぜ!」


それはもう、きらきらと目を輝かせてカスミを指差した。



「……ぷっ、く、くくくく……!も、ダメ……あ、あはははははは!」


必死に抑えていたけど、ついに盛大に吹き出して笑ってしまった。
お腹が痛くて涙が出る。


「ひ、ヒカリ、そんなに笑っちゃ、失礼……ぶふふっ!」

「た、タケシも、笑ってるじゃない!」


二人して転がるように笑って。
ポッチャマがやれやれ、なんて首を振っているけど、面白いから仕方がない。


「はぁー……、ちょっと可哀想だったかな」

「ま、明日は存分にカスミを独り占めさせてあげるんだ。今日はいいってことで」


『ええ、受けてたつわ!でも、今日は疲れちゃったし、明日ね』


サトシからバトルに誘われた時のカスミの言葉。
今からするぞ!って感じで意気込んでいたせいで、サトシは呆然としてしまった。
その顔といったら!
長旅で疲れているカスミはすでに眠っていて、サトシは肩を落としながら浴場へと向かっていったから、私はタケシとこうして笑いあっているのだ。


「でも、やっぱり会えてよかったわ。あんなサトシを見れるなんて!」

「だろ?ヒカリはサトシと似てるところがあるからか、基本的には仲がいいもんな。張り合いはするものの、喧嘩は少ない」

「うん。ハルカはあの性格だし、サトシを先輩として尊敬してるものね」


サトシとカスミは対等だと、会ってみてよくわかった。
お互い素直じゃないということも。


「カスミもサトシと話したそうにしてたわね」

「気づいてたのか?」

「うん。やっぱりタケシも気づいてたみたいね」


チラチラとサトシを見てたし、バトルしようと言われた時はすごく嬉しそうだった。
そのくせ、疲れてるから明日ね、なんて。
その時のカスミの表情を思い出すと、胸のあたりがくすぐったくなる。
嬉しいなら、そう言えばいいのにね。


「ヒカリ、明日は早起きした方がいいぞ」

「え?何で?」

「起きたらわかるよ」


タケシがニヤリと頷くから私は首を傾げたけれど、いざ太陽が昇ってみればその意味がよーくわかったのだった。



「うそでしょ……?」

「だから言ったろ?」


寝癖も直さず、着替えもそこそこな私はあんぐりと口を開けてその光景を眺めていた。
朝日が近いせいで私もポッチャマも目をしぱしぱさせているというのに、彼らは元気そのもので。


「カスミ、いくぜ!」

「全力でいくわよ!」


こんな朝っぱらからポケモンバトルなんて、二人とも何考えてるのかしら!
私とサトシは似ているとタケシは言っていたけど、サトシとカスミもなかなかよね。そう言って隣に立つタケシを見上げると、嬉しそうに笑っていた。


「それにしても、カスミってばホントに強いのね。サトシと互角じゃない」

「ああ、旅をしていた頃よりさらに技に磨きがかかってるな」


カスミの技の連携の仕方にはすごく驚いた。あんな使い方があるんだ、って。
さすがはジムリーダーだ。
ただ気になったことがひとつ。
サトシの横で応援しているピカチュウが、全然戦闘に参加しないことだ。
見る限り、参加しようとも思っていないような気がする。
(これに関してはあとでサトシに聞いたんだけど、ピカチュウはカスミが大好きだから、らしい。納得なようなそうでないような……)
サトシとカスミがあまりにも楽しそうだから、混ざりたいとは思うけど。
今日は二人っきりにさせてあげなきゃね。


「あ、そうだ。ヒカリ、カスミは水中ショーなんかもやるんだよ。ヒカリにもいい刺激になると思うから、後できいてみるといいぞ」


前言撤回!
私はタケシの言葉に、寝癖がついてるのも忘れて二人のもとへと走っていった。



(ごめんねサトシ!カスミってば魅力的すぎるから!)



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今回はヒカリ視点。
サトカスなのに、全然それっぽくない!
タケシとヒカリに愛を(以下略
みんなで仲良くきゃっきゃしてるのが好きです。
なんだかんだで、その後サトカスはしっかりいちゃついてると思いますよ。(よりにもよって丸投げ)
読んでくださった方、ありがとうございました!
※一部修正しました。

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