夢の続きはこれからの未来で



可愛くないだの、もっと可愛くなれよだの。
女の子に何てことを言うのかしらって思ってた。
デリカシーってものが無かったのよ。
そういうヤツだって、ちゃんとわかってたけど、でもね。
可愛くないって言われるたび、小さなトゲが刺さったように胸が痛んでしまったの。
誰だって、そんなこと言われたら傷つくものだけど……。
あたしはそんなこと言われ慣れていたから、まだ良かったのかもしれない。
だって、お姉ちゃんがとっても美人で、妹のあたしでも見とれてしまうほどなのよ。
劣等感。感じて当たり前の感情なわけで、それが苦しくて逃げだした事もあった。
でも、



「結構かわいいじゃん」


女の子は着飾れば誰だって可愛くなれるもの。
だけど、すごく嬉しかった。
可愛いって言われて嬉しく思わないはずなんてないけれど……。
ただ、彼は特別だったから。
だから一言一言に傷ついたり嬉しく思ったりするの。



「何か……少し見ない間に……」

「間に……?」

「その、えっと、ちょーっとは可愛くなったんじゃないか?」

「ちょーっと、って何よ」


ムッと頬を膨らませれば、困ったように笑う彼。
そんなとこも大好きだった。
意地っ張りで素直じゃなくて、本当に、変なところが似ていたあたしたち。
けれど彼は、たくさんたくさん旅をしてきたせいか、



「カスミは可愛いよ」


なんて。
さらりと言ってしまえるのは、旅をしてきたおかげなのかしら?
ホウエン、シンオウとあたしの知らない所を旅した彼は精神的にもすごく成長していた。
彼が可愛いって言ってくれるたび、大人になったのだと思い知らされる。
彼の変化についていけなくて、ドキドキと鼓動が速くなって。



「好きだ」


泣いたっていいよね?
可愛くないなんて言っていた昔の彼にはもう会えない。
でも、でもね、すごく嬉しい。
だって、あたしは彼が大好きだから。
気持ちが通いあって、はじめて、あたしたちは大人になったんだって思った。



「サトシが好き」

「ん、知ってるよ。オレもカスミが好きだから」

「……知ってる」


気づけば、あたしも素直になっていた。
好きだなんて、言えてしまう自分にびっくり。
抱き合ったり、キスしたりなんて、昔のあたしたちにはきっと想像できない。
昔を思うと、甘酸っぱいようなものが胸いっぱいになって弾けそうになって。
今を思うと、幸せすぎて涙があふれる。



「カスミ……?」

「……おはよう」

「おはよう。何で泣いてんの?」

「うん……。ねえ、サトシ」

「ん?」


胸はきゅんと痛くて、あふれる涙はそのままに。


「私、可愛い?」

「何だよ急に。カスミは可愛いに決まってるだろ」

「……可愛くないって、言ってみて」

「何でだよ」


だって、昔のあなたはそう言っていたのよ。
そんなふうに、指で優しく涙を拭ってくれるなんて絶対あり得ないんだから。


「お前、俺がカスミ大好きだって知ってるだろ? だから、可愛くないなんて思えない」

「……知ってる」

「なら、大人しく幸せを噛みしめろ」


にっ、と笑う表情は昔を彷彿させるようで、余計に胸が苦しくなった。
結局、ずっと昔から彼の事が大好きだったのだということと、


「カスミ、愛してるよ」


私もあなたを愛しているということ。



(あのね、とても幸せな夢をみたのよ)



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暑くて寝苦しい夜中の一時。
カッと目を見開き暗闇でポチポチ。そんな突発的なサトカスでした。
お付き合いくださり、ありがとうございました!

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