気になる人ができた。
その人は、とても目立つ人で、でも目立たない人。
目立つのは頭。すぐ見つけることができる。
あのアフロ。

「ほんとに不思議なのよね……」

あの人の存在に気づいたのは、授業中にふとグラウンドを見た時。
ぽつんと一人、トンボ掛けをしていた。
目立つ頭だったからすぐに覚えてしまい、それから時々、校内で見かけるようになった。
学生ではないのは当然として、教師でもない。
見かけるといつも違うことをしていて、教材を運んでいたり、ゴミ捨てしていたり、切れた蛍光灯を変えていたり。
普通に考えれば用務員。だが、食堂でフライパンを振っていたり、剣道部で部員と竹刀を振っていたり。校長先生がペコペコ頭を下げているのも見たことがある。
それに、あの人を気にかける人がいないことも気になる。
あんなに目立つのに、なぜかスルー。物静かだから?そういえば喋ってるところは見たことがない。だから目立たない……。
一体、何者なのかしら?
まさか、幽霊……なんてことはあり得ないか。

「気になる……」

呟くと、ポンと肩を叩かれた。
振り返って驚いた。

「あ……」
「…………」

アフロ……!
揺れるアフロを見つめていると、スッと何かを差し出される。
プリントだった。ハッとして手もとを見る。どうやら参考書の間に挟んでおいたものが落ちてしまったらしい。

「ありがとうございます……」

頭を下げると、アフロの人もぺこりと丁寧に頭を下げた。

「あ、あの!」

去ろうとする後ろ姿に声をかけて、しまったと思った。呼び止めてどうするの。
振り返る彼は首を傾げる。

「あ……の……その、な、名前!名前は何ていうんですか!?」

三秒くらい間があった。
彼が胸ポケットから取り出したのは、メモ帳のようで。そこにサラサラと何か書いていったかと思うと、そのメモ帳を差し出された。
受け取って見ると「斉藤終ですZ」と書かれている。
Zって何だろう?と疑問に思いながらも、持っていたペンケースからシャーペンを取り、その下にサラサラと文字を書いていく。
「私は志村妙ですZ」と遠慮がちに書いたメモ帳を返せば、何ぜか少し嬉しそうな顔をされて。
ポンポン、と頭を撫でられそのまま斉藤終は去っていった。

「……!?」

何コレ。
結局あの人は何者なのかはわからないけれど。
名前を知れたのだから、次にはもっと色んなことを知れるかもしれない。
ドクンドクンと鳴る心臓は、その次への楽しみのせい。
……のはず。


斉藤×妙


終兄さんで見てみたいとのお声があったので!
出会いを書きたかったので今年のテーマでもある恋人甘めではありませんが……!
あ、誕生日も関係なかった……。
終兄さんは別枠的な感じでお願いしますZ……!
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