「ねえ、前から気になっていたのだけど」
「ん?」

きょとんとした丸い目で見つめられ、恥ずかしくなって視線を逸らす。

「何ですかィ?」
「あの……その……私とあなたは仲がいい方じゃない?」
「仲がいい方って……彼氏彼女の関係なのにそれはねーぜ姐さん」
「彼女に姐さんなんて言わないわよね、普通」
「もっとカレカノっぽくしろ、と?」
「いえ、そうではなくて……いや、そうなのだけど……」

幼なじみなのがいけないのだろうか。
ずっと仲のいい友達で、そこから恋愛感情が芽生えて、つき合うことになった。
手を繋いだりはしても、幼なじみからカレカノになった実感があまりない。
それはきっと、彼が昔から変わらないから。姐さん、とふざけていたあの頃と。
近所に住んでた年上のガキ大将を土下座させていたのがきっかけ。それからずっと姐さんだ。
もともと長女で面倒見はいい方。ついつい姉のような態度をとってしまうのも原因だろう。
同い年なのに。つき合っているのに。

「もうすぐ、私、誕生日でしょう……?その、大人に近づくわけで……」
「大人の恋愛がしたい……とかですかィ、姐さん」
「え、ち、違わないけど違うわ!」
「どっち?」

いきなり大人の恋愛といわれても、何を大人の恋愛というのかわからない。
はじめての恋だし。
ただ。

「私たち、幼なじみの関係のままって感じがするから……それが嫌なわけじゃないけど……」
「けど?」
「……な、なまえ……を……」
「妙」
「!?」
「何なら耳元で囁こうか?妙……」
「ちょ……!ま、ままま……!」

忘れていた。彼は基本的に人をからかうことが好きだったと。
あまり私にそういうことしてこないから……!
名前を呼んでほしいということにも気づいていたらしい。意地の悪い!

「……姐さんも姐さんですぜ」
「え」
「いつまでも沖田君、なんて。昔の呼び方してほしいわけじゃねェですけど」
「昔の……あ、総ちゃん?」

む、と可愛らしい顔立ちが面白くなさそうに歪む。
そういえば、総ちゃんは嫌だと言い出したのはいつからだったか。

「……私、総ちゃんって呼び方はミツバさんだけに呼ばれたいからだと思っていたんだけど……」

違ったらしい。
思わず頬が緩んだ。

「……総悟、くん?」
「……嬉しいけどむず痒い」
「フフッ、その気持ちはわかるわ」

ずっとそうだったものを変えるのは、なかなか難しい。恥ずかしいというべきかもしれない。
それでも、変化を望む。

「まだ、もう少し姐さんでいいかな」
「……俺も沖田君でお願いしやす。あともう少しの間は」

誕生日にはデートの約束をしている。
その日は幼なじみではなく、恋人らしく過ごせそうかも。


沖田×妙

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