「新八はいないっつーから……」

ふてくされたように、彼は言った。
なぜ機嫌を損ねたのかわからず首を傾げると、ますます眉間に皺が寄る。

「せっかく色々と用意したのに……そんな顔された私がどう思うと思ってるのよ」
「お前な……もう……ホント……」
「何よ」
「新八のいないこの家に、何で俺を呼んだ」
「銀さんが誕生日だから、ふたりでお祝いしようと思って……」
「そう!ふたりっきり!恋人同士の俺たちがふたりっきりだよ!わざわざ新八いないとか言うから期待したの俺は!!」
「ケーキを?」
「ケーキじゃねーよ!いや、ケーキは食べたいけど!!」

ムスッとしたり怒鳴ったり。
銀さんの誕生日とはりきって、料理も頑張って、銀さんの好きなチョコレートケーキだって特注で、プレゼントだっていっぱい悩んで買ったもの。楽しく過ごせると思ったのに。

「何を怒ってるのか言ってくれなきゃわからないわ……ここのところ銀さんがお仕事で忙しいからなかなか会えなくて……でも今日のために我慢したのに……」
「我慢したのは俺もだっつーの……」
「気に入らなかった?」
「そうじゃねぇ。そうじゃねぇけど、おま、だってコレ……食い物やプレゼントはいいとして、何で大量のDVDとかゲームとかあるわけ?」
「仕事大変だったでしょ?ダラダラしたいだろうなと思って用意したのよ。一晩中遊び尽くすつもりで」

会えなかった時間の分、一緒にいたいから。
そう言えば、ため息をつかれた。
銀さんのためを思ってのことだし、マダオな銀さんなら喜んでくれると確信していた。
でも違った。銀さんのことなら、何だって解るつもりだったのに、違っていた。
悲しくなって、涙が浮かぶ。

「妙……」

ちょいちょい、と手招きされる。おそるおそる近づけば、ぎゅっと抱きしめられた。

「普段なら、ダラダラできるって喜んだだろうよ」
「……誕生日だから、もっと特別なことがよかった?」
「特別がほしいわけじゃねーよ……。俺は、彼女であるお前をいただけると思ったの」
「銀さんの彼女なんだから、私はあなたのものでしょ……?」
「うん。そうだね、でもそうじゃなくて。……今時の大学生がこんなに鈍いと銀さん心配」
「どういう意味?」
「こういう意味」

くるっと身体が回転。
小さな悲鳴は唇と一緒に奪われて、かわりに甘い吐息が零れた。
押し倒されて、やっと気づいた。
彼が何を求めていたのかを。

「にぶ〜い妙ちゃんに教えてあげよう。銀さんは妙ちゃんとセッ−−」
「言わなくていいわよバカ!」
「ぶべら!」

今日は殴らないようにしようと思っていたのに。いや、でもこれは別。セクハラはダメだもの。

「もう、はやく料理食べて!冷めちゃうじゃない!」
「銀さんの誕生日なのに銀さんもうボロボロだよ。さすがだよこの娘、一撃でボロボロだもの……あ、イエ、イタダキマス」
「……銀さん」
「ん?」
「お誕生日おめでとうございます」
「おう。ありがとな、俺のために色々用意してくれてよ」
「いいえ……銀さんのことを想ってのことだから楽しかったし……えと、それで、あの……プレゼントも用意したけど……」
「うん?」
「こ、今夜……わ、私のことも……も、もらってくださいね」

ガチャーン、と。
皿が割れる音が盛大に響いた。


銀時×妙

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