包みを広げれば、いつもより少しだけ豪華なお弁当。
新八が早起きして作ってくれたのだろうと思うと頬がゆるんだ。
妙が作ったのとは違う、厚めの甘い卵焼き。パクリと頬張る。

「あー!」

突如、教室に響いた叫び声。

「誰だ!俺の髪にご飯粒をつけたのは!エリザベス!ティッシュを持ってきてくれ!」

長い後ろ髪にくっついたご飯粒は少し潰れているようで。べたっと張りついているそれを桂は懸命に取ろうとしていた。
妙はその仕草をじっと見つめる。
女子のような、いやそれよりも艶のある滑らかな桂の長い黒髪。

「ザベス……!ティッシュはまだか……!」

妙はすくっと立ち上がると、自分のポケットティッシュを桂に差し出した。
お気に入りのうさぎのキャラクターが描かれたケースから一枚取り出す。

「これ使って」
「ありがとう、助かる」

ホッと安堵した桂は、妙から受け取ったティッシュで髪を拭う。
その様子をまじまじと見つめていると、視線に気づいたのか桂は不思議そうな顔をした。

「あ、ごめんなさい!髪きれいだから」
「身だしなみだからな。それなりには」
「へえ……やっぱりお手入れしてるのね。トリートメントとか使ってるの?」
「ああ、実はよいものを見つけてな」
「よいもの?」

思わず食いつく。

「良ければ教えるが」
「本当?ぜひ知りたいわ」
「そうか。それは……あ、いや」
「ん?」
「うむ……そうだな、うむ」
「桂君?」

何か思い立ったようにポンと手を打ち頷く桂。
妙は小首を傾げる。

「いや、よければプレゼントしようと思ってな」
「え?いいわよ、そんな……!ちゃんと自分で買うわ」
「遠慮する事はない。そんなに高いものではないし、今日は誕生日なのだろう?」
「知ってたの?」
「あれだけ騒いでいればな。それに放課後たんじょブアァァ!!」
「桂君!?」

突然机とともに吹っ飛んだ桂は黒板に激突した。
弁当箱がひっくり返り中身が桂の頭に乗る。

「り、リーダー……!な、何を……!」

どうやら、桂を殴ったのは神楽のようだ。
苦しむ桂の胸元を揺さぶっては何か小声で脅しているように見える。
一体どうしたのだろうか。
声をかけようとした妙の足下に、揺さぶられ目を回した桂が倒れ込んだ。

「……は、ハッピーバースデー……」
「あ、ありがとう……」

ぐっと親指を立てた桂はそのまま気を失ってしまった。
エリザベスに引きずられていく桂を見つめながら、今日はおかしな日だと妙は小さく息を吐いた。


何かを示しかけた真面目電波な桂!

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