本編 | ナノ
未来編
『主、もう少しで転送システムが返ってきます』
小さな携帯電話のような端末の画面を見つめながらトウキが言った瞬間、高層ビル群の頭上に超炎リング転送システムが出現する。
「さっすがー。破壊されると思ったんだけどな〜」
『否、破壊しようとしたようですが何とか持ちこたえたようです。』
「へぇ…っていうことはどこか壊れちゃってるのかな?」
その白蘭の問いに画面を見つめていたトウキは顔を上げ、申し訳なさそうに眉を下げる。
『是。到着時にはぐれる可能性が濃厚です。それと…』
トウキは一端言葉を区切り、目を伏せる。
『第一エンジンが損傷しているため約1億FVの炎圧が必要です』
その言葉に真六弔花の面々は疲れたようにため息を吐いた。
「おいおい、そんなに炎消費したら俺達へろへろになるぜ?」
ザクロの言葉に同意するようにブルーベルも必死に首を縦に振る。
そんな二人にため息を吐いてからトウキは口を開いた。
『否、超炎リング転送システムへの炎の供給は私がやります』
「トウキチャンは前測った時あり得ない数字出たからね〜それくらいは余裕だよ」
今まで知らされていなかった事実に目を見開く真六弔花の面々を尻目にトウキはリングに黒い炎を灯した。
辺り一面が黒い炎で覆われる。
黒い炎が真っ直ぐに超炎リング転送システムに向かっていく。
空が超炎リング転送システムの放つ黒い光で覆われた。
それはまるで白蘭が絶対的な権力を持つ、黒い未来を示唆しているかのようだった。
下には様々な建物…それと半分にえぐれた山。
並盛町に無事到着したトウキ達は上空の風によってばらばらに散ろうとしていた。
『主…!!』
トウキは白蘭を自分の方に引き寄せる。
白蘭が自分の服をつかんだことにホッとすると、近くにいたトリカブトのマントを掴む。
離れたところにいたブルーベルに腕を伸ばし、後少しの所で指が触れそうなところでトウキ達はばらばらに散った。
鬼事、開始
(…否、約10年前あの時からそれは始まっていたのです)
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