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リング編


「沢田夢月様が勝ちましたので、沢田夢月様が正式にボンゴレの夢の守護者となります。」

そう言って無表情ながらこめかみに汗を浮かべるチェルベッロの女が言った。
夢月は自分を何か言いたそうに睨む綱吉達を横目に、頷いた。
白い甘ロリ服は自身から出た血で所々赤黒く変色していた。

『ふーん。そう。…なにか言いたそうだねぇ?みんな?』
「…なんで。なんで?」
『なんでって何がぁ?ツナぁ』

自分が責められているのに、楽しそうに夢月は嗤う。
月は未だに煌々と天に輝いていた。

「なんで今まで黙ってたんだよ!ひどいよ!」
『黙ってたって何を?ひどいって何が?
秘密を教えてなんてツナ、言ってないよね?
なのにどうしてひどいなんて言えるの?』
「っそ、れは!!」

そう。綱吉は何も言わなかった。ただ単に、素を見せてくれた、と喜んだだけ。
教えてと言わなかったから教えなかった。夢月にとってはそれだけのことなのだ。

『もういいよぉ?綺麗なお人形さんも手に入ったし。
ボクのことを怖がっているみたいだから、ボンゴレには入らないでいてあげる。
ボクが怖くなくなったら、ボクに吊り合う強さになったと思ったらこれを鳴らしてぇ?』

そう言って夢月が懐から出したのは、ちりん、と涼やかな音が鳴る鈴だった。

「す、ず?」
『そうだよぉそれは自分の意思でならそうと思わなきゃならない鈴だよぉ。覚悟ができたら鳴らしてねぇ?』

夢月は綱吉の顔を覗き込みながら嗤った。
まるで、今のお前に覚悟などできるわけないだろう?とでも言うように。

「…」
『じゃーねぇ』

そう言った瞬間、夢月の足もとから扉が出てきた。

『いくよぉレロ、スクーロ』
「は、はいレロ」「…(コクン)」
『じゃーねぇまた会える日までぇ』

流れる黒髪が、煌々と照る月に照らされ紫色に光った。



  終わり、そして決別
(ボクのことを畏怖の眼で見る家族なんて、イラナイ。)(ボクのことを怖がる仲間なんて、イラナイ。)


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