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リング編


「これから夢の守護者試験を始めます。」

煌々とした月に照らされながらチェルベッロの女がそう言った瞬間、女の背後から、一組の秀麗な容姿をした双子が出てきた。

白い甘ロリ服を纏う夢月とは正反対に、飾り気のない黒いコートに身を包むその一組の男女は対戦相手がボンゴレ最強の殺し屋、と聞かされていた夢月の想像を悠々と通り越す程に端正な顔立ちをしていた。

その容姿に夢月は瞳を輝かせる。

『…ねぇ、そこの双子さぁん』
「なにかしら?」
『ボクがかったら、お人形になってぇ?』
「いいわよ。行きましょう、スクーロ」

夢月の言葉を戯言ととったのか双子は青々とした黒髪を靡かせながら軽く頷く。

「ああ、モルテ」

双子の姉の言葉に男――スクーロが頷いた瞬間、二人が夢月に飛びかかった。
夢月の胸に銀のナイフが刺さる。

ナイフはブラウスの左胸の部分――丁度心臓に、正確無比に突き刺さっていた。

口を開いて夢月が何かを言おうとした瞬間、ごぷり、と口から深紅の液体があふれ出る。
スローモーションに掛けたかのようにゆっくりと夢月が倒れた。
土に赤い血が広がり、吸い込まれていく。
紅い血は夢月の白いスカートまで汚し、それが致命傷な事は一目で見て取れた。

「なんだ、リング候補者って言ってもこんなもんか。」
「興ざめね。帰りましょう、スクーロ」

青々とした黒髪を靡かせながら、双子が手を繋ぎながら踵を返す。

「そ、んな、夢月!?起きろよ!夢月!!」
『うるさいなぁ、ツナぁ。口出ししないでぇ?』

そう言って、鮮血が滴る血まみれの体で立ち上がる夢月。
ナイフを抜くと、あり得ない速さで傷が塞がっていく。
余りにも人外で、あり得ない光景だった。

「そ、んな。殺したはずじゃぁ…」
『二対一って言うのも不便だからぁ、女の方はぁ、この中に入っててぇ?』

夢月が爪を赤く塗った白魚の様な手を翻すと女――モルテの周りにサイコロ型の檻が出来上がる。

双子の姉を突然取り囲んだ檻に、スクーロが攻撃を仕掛けるも檻は傷一つ付いていない。

「お、まえ!モルテを離せ!」
『やーだぁ解放してほしかったらぁボクに勝ちなよぉ』
「上等だ。ボンゴレ九代目直属部下、スクーロ。参る。」
『んー?これってぇボクも言った方がいいのかなぁ?』
「名乗るならとっとと名乗れ。」

ズ、ズズという嫌な音をたてて夢月の色が変化していく。肌の色は浅黒く、眼の色は金色に髪は煌々と月に照らされ紫の光沢を放つ。

そして、額に七つの聖痕。


「「「「「「!?」」」」」」


『ノアの一族第九使徒沢田夢月。継承メモリーは【夢】。それじゃぁいくよぉ?』

夢月が赤く塗った爪をスクーロに差し伸べるような動作をするとスクーロの周りの景色が一瞬にして変化する。

「どこだ、ここは。」

所々に蝋燭の浮く、不思議な空間にスクーロは眉根を寄せた。

『ここは夢の世界。ボクだけにしか入れない秘密の世界。…ねぇ、君はどうやったら壊れてくれるかなぁ?』

そう言って、赤い赤い舌を出しながら夢月は嗤った。



  囚われの人形
(レロレロ…相変わらずえげつないレロ)(なんかいったぁ?レロぉ)(な、何でもないレロ!!!)

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