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短編


「みんな何してんの!?」
学校の補修から帰ってきた綱吉はそう叫ばざる負えなかった。


とりあえず自分の部屋でオレンジ色の髪の人に武器を向けている守護者達に武器を下げるよう言い、綱吉はやっと床に転がっているオレンジ色の髪の人物を目に入れた。



「卯月も…何やってんの?」
その声に卯月…貞子のように伸ばした髪を奇抜なオレンジ色に染め、オレンジ色のワンピースを着たまごうことなき変人は、そのすだれのような前髪から少しだけ見える唇をニタリ、と吊り上げずりずりと綱吉のいる所に這っていく。



まさにオレンジ色の貞子、という卯月の行動に変人の幼馴染に小さい頃から振り回されまくっていた綱吉も顔が引き攣る。

守護者達も祈祷し始めたり顔を引きつらせたり武器を構えたり部屋の隅で震えたりと様々だ。



「ひどいんだようこの人たち。ツナはてんびん座だからツナの部屋の物を全部赤くしようとしたらいきなり怒りだしたんだよう」
がしり、と綱吉の足を掴み卯月が話し出した内容に、思わず綱吉は自分の守護者達に親指を立てた。




「卯月、何で部屋を赤くしようとしたの?」
「占い番組でてんびん座のラッキーカラーが赤だったんだよう。ちなみに小生はオレンジ色がラッキーカラーなんだよう」

その言葉を聞いた獄寺隼人は顔を引き攣らせた。占いでやってたからって髪までオレンジ色にするか普通…と。
しかし、獄寺の視線の先にいる綱吉は笑みを浮かべながら卯月の頭を撫でている。

その綱吉の笑みに獄寺はあることに気が付いた。

――もしや…十代目はあの卯月、とかいう変人女に恋をしているのでは?

変人女がボンゴレ十代目の妻になることと綱吉の幸せ…どちらをとるか。
獄寺の一分間の脳内会議によって決まったのは綱吉の幸せ…つまり、綱吉の恋を応援しよう、という結論に達したのである。

まあ実際は綱吉が昔からの幼馴染の奇抜な行動に乾いた笑みを浮かべていただけなのだが。





一方山本武、笹川了平両名は卯月を熱い視線で見ていた。

山本武の位置からはすだれのような前髪が寝っ転がっていることで横に流れ、卯月の顔がよくみれるのだ。

それなりに美人なのだが無表情、死んだような眼。綱吉と話すことで時折ニタリとつり上がる口はただ不気味だった。
だが山本はそれを頬を赤く染めながら見ていた。

補正がかかっているのか悪食なのか、卯月に惚れたようだ。



瀬名に熱い視線を向ける山本の横にいる笹川了平は違う意味の熱い視線を卯月に向けていた。

オレンジ色のワンピースに包まれていてわからないがネコ科の動物のようにしなやかに鍛え上げられたその体。
まさしくボクシングをするために生まれてきたに違いない!!

グッ、と拳を握る笹川了平の瞳は熱意に満ちていた。





並盛町最強の風紀委員長雲雀恭弥は部屋の隅で体育座りをして体を震わせていた。

実は並盛最強にも弱点があった。それは…幽霊。

まさにオレンジ色の貞子、という格好の卯月は恭弥の恐怖の対象ど真ん中だった。
今でも沢田綱吉と話している卯月の口角が吊り上がるたびに鳥肌が体中を駆け巡り恭弥は卯月を視界に入れないよう膝に顔をうずめた。




部屋の隅で体を震わせながら膝に顔をうずめる並盛最強の隣で、六道骸はぶつぶつと何かを呟きながら放心していた。

放心している原因はもちろん卯月。事の起こりは綱吉が部屋に帰ってくる一時間ほど前。
いつも通り綱吉の体を乗っ取ろうと窓から彼の部屋に入った骸は部屋の中で何かの作業をするオレンジ色の物体を見つけた。

「クフフ…あなたは何者ですか?言っておきますけど、綱吉くんは僕の物です!」

クハハハ、と窓枠に座って宣言する骸は間違いなく変人だった。
そんな骸にずい、と卯月は顔を近づけニタニタと笑いはじめる。

「な、なんですか貴方は!警察に通報しますよ!?」

綱吉がその場にいたらこういっただろう。「お前だって逮捕されるぞ」と。
そんな骸の言動にも臆せず、卯月はニタニタ笑いながら骸の腕を引っ張り、部屋に引き入れる。

「小生のラッキーカラーはオレンジ色。ラッキーフルーツはパイナップル。いやぁ、小生はついてるねぇ。」
「ひっ」

ニタニタとつり上がる唇、死んだような眼が剣呑な光を帯びたのを見た瞬間、六道骸の視界はブラックアウトした。
眼が覚めた六道骸が最初にしたことは現実逃避である。
「あれは夢だ、現実ではありません。夢です。ええ、夢です」とひたすらに呟く骸の精神が壊れないことをひたすら願うばかりである。




エスプレッソを買いに出ていたリボーンは綱吉の部屋の惨状を目の当たりにしてそのポーカーフェイスを崩した。

乾いた笑みを浮かべる時期ボンゴレボス沢田綱吉。
その足に張り付くオレンジ色の貞子のような何か。
乾いた笑みを浮かべる沢田綱吉に暖かい視線を投げかける嵐の守護者獄寺隼人。
貞子のような何かに熱い視線を向ける晴れの守護者笹川了平と雨の守護者山本武。
部屋の隅でガタガタと震える並盛最強の風紀委員長雲雀恭弥。
そしてその隣でぶつぶつと何かをつぶやきながら放心している六道骸。
そしてそんな部屋の淀んだ空気を気にせず走りまわるアホ牛もといランボ。

そんな室内の惨状にリボーンは呆れたように呟いた。「何やってんだお前ら」と。


  貞子を見たら死んだふりをしなさい。



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