寒すぎる。私はあまりの寒さに震える体を抱えながらくしゅんとくしゃみをこぼした。ポカポカの柚子風呂に入って、温まった体のまま何枚にも重ねた布団に入った筈なのに。
外の景色を見るとはらはらと雪が降っていて、窓の縁にまで積もっている。雪の冷たさを想像してまたぶるりと体が震えた。
そういえば今日は冬至の日だっけ。冷え性な私にとって一年の中で一番冬が短い今日は憂鬱な日である。

「うぅ…早く暖かくならないかなあ。」

一人呟きながら暖を求めて布団でもぞもぞしている間に、私の後にお風呂に入っていた蒼がお風呂から上がって部屋に入ってきた。蒼は部屋に入って私を見るなり、まるで馬鹿にするように鼻で笑う。

「何なまえ、モグラごっこ?」
「だって寒いんだもん。」

"モグラ"だなんて冷え性の寒さを知らないから言えるんだ。そう思いながら隣に敷かれている布団に入る蒼を見つめていると、ふといいことを思いついた…お風呂上がりの蒼の体は温かい筈だから。私はこちらに背を向けている蒼にぎゅうっと抱きつく。

「おい、何やってんの馬鹿。」
「あったかい。」

先程お風呂から出たばかりの蒼は当たり前だけどまだ暖かくて。私の冷たい体は蒼から暖を貰って少しずつ暖かさを取り戻す。ぎゅうぎゅうと抱きつく私に、蒼は離れろと言ってくるけれど、耳は珍しく真っ赤に染まっていて、少しばかりの優越感。
いつも信乃信乃なんて言って、彼を虐めているのが嘘みたい。調子に乗って冷たくなった足をくっ付けると、蒼は余りの冷たさに驚いたのかびくりと肩を震わせた。

「冷た…なまえ、本当に風呂入ったの?」
「入ったよ。ふふっ、蒼の足はあったかいね。」
「あーはいはい。」
「蒼かわいい。すき。」

そう言って頭をぐりぐりと背に押しつけながら、更にぎゅっと抱きつく。蒼ははあ?と低い声を出しながら腰に回っている私の手掴んだ…あ、手もあったかい。
蒼が力を出せば私の手なんて簡単に離せる筈なのに、それをしないのは本気で嫌じゃないのかな、なんて思ったり。

「ねぇ、このまま一緒に寝てもいい?」
「…勝手にすれば?」
「やった、蒼だいすき。これで一晩あったかいね。」
「はあ…馬鹿。」
「別に馬鹿でもいいもん。あったかいから。」
「もういいから黙れ…」

蒼は片手を顔に当てて顔を隠している。私は身を乗り出してそれを見ようとしたけれど、こっち見んな、なんて言いながら押し返された。その手はやっぱり暖かくて、今晩は寒いけれど蒼のおかげで快眠できそうだなあなんて呑気に思った。
蒼と一緒なら寒い日もいいかも。

真白い夜の抱擁

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