真っ青な空がすっかり夜に染まった頃。私は双子の兄に手を引かれ、庭園の片隅にある高台に訪れていた。まず初めに目に飛び込んで来たのは、たくさんの星達が輝く満面の夜空。

「うわあ…!きれいな夜空…!!」
「でしょでしょ〜?ここから見える星、すっごく綺麗だから、なまえにも見せたかったんだ〜」

こっち座ってと、絨毯を敷いて手招きしている紅覇の隣に私も腰掛けた。
あれがこと座のベガ。あれがわし座のアルタイル。夜空に向かって指をさしながら教えてくれる紅覇。その指を辿りながら私も夜空に浮かぶ星を見る。
ベガにアルタイル。名前を聞いてふと思い出した夏の節句。同時に紅覇も私の方を見て口を開いた。

「なまえ、今日何の日かわかる?」
「ふふっ、七夕…でしょう?」
「そ。大正解〜!」

顔を見合わせて笑う。以心伝心。私達は世界に生まれる前から一緒だった双子。誰よりも近い存在。
18年間という長い年を重ねても、それだけは変わる事のない事実。私はそんな自分の片割れである紅覇がとても大切で、大好きなんだ。

「今日は晴れてるから織姫様と彦星様、会えたかな…?」
「ん〜そうだねえ。」

紅覇が指をさす先に見える光の川。美しいあの川は、織姫と彦星を引き裂く川でもある。しかし一年に一度の今日、七月七日だけはどこからかやって来たカササギが天の川に橋を架けてくれて、二人は会う事が出来るらしい。

「でも大好きな人と一年に一回しか会えないなんて。私だったら紅覇と一年に一回しか会えないなんてなったら…寂しくて耐えきれないかも。」
「なかなか可愛い事言うねえ、なまえ。」
「だ、だって…じゃあ紅覇は私と会えなくなっても寂しくないの?」
「まさか。」
「…じゃあなんでそんなに涼しそうな顔なの。」

小さく呟いた私に対して、紅覇は可笑しそうにけらけらと笑った。揶揄われているのが悔しくなってそっぽを向くと、紅覇は馬鹿だねえと言って私の顔を自分の方に向けた。

「一年に一回しか会えないなんてなっても、僕はなまえに無理矢理にでも会いに行くし。一年に一回しか、なんて事になるわけないじゃん?」

得意気に言った紅覇。そんな彼の言葉を聞いて、私は自然と安心感を覚える。けれど彼ばっかり一枚上手でやっぱり悔しい。

「…無理矢理にでもって、どうやって?」
「え〜如意練刀をおっきくして、橋代わりに使うとか?」
「……本当に出来そうで怖い。」
「出来そうじゃなくて僕なら本当に出来るってば〜」

だって大切な大切な双子の妹のためだもん。
そう言って私の手をぎゅっと握った紅覇。紅覇の手は私の手よりも一回り大きくて、私の手はすっぽりと覆われてしまっている。
"僕なら本当に出来る"なんて。紅覇の言葉はまるで魔法のようで、紅覇が言うとどんな不可能な事でもやってのけてしまうような、そんな説得力があるのだ。
やっぱり彼は私より一枚なんかじゃなくて、何枚も上手だ。

「…紅覇が言うと、本当に何でもできそう。」
「なまえのためならねえ?あ、せっかくの七夕だし、なまえのお願い聞いてあげよっか?」
「…そんな事言って、わたしの一番のお願いなんて紅覇には分かるでしょう?」

紅覇は笑いながら私の答えを待っている。私は結局彼の思い通りに口を開いた。

「…紅覇とずうっと一緒にいたい。」

私の言葉と同時に、星達が輝く空で一筋の流れ星が流れた。けれど私の願いはそんな流れ星ではなく、目の前で笑う紅覇によって叶えられるのだ。

ミルキーウェイの結び目

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