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第2回拍手御礼SSS過去ログ:『恋のゴールテープ』(零)


今年も体育祭の季節がやって来た。
オレが通っている高校は男子校だけど、体育祭や文化祭といった学校行事は一般にも開放していて、その時ばかりは近隣の学校の女子が観に来たりする。
去年までなら、そんな女子のことなんか気にも留めなかったのだが……。
「零くん、がんばって!」
観客席の最前列、満面の笑顔で手を振ってくれている隣の女子高に通う女の子。
友達以上恋人未満という言葉がぴったりの関係で、正式に付き合うようになるのは時間の問題だ。
もしかしたら、今の自分達の姿は、傍から見れば立派に恋人同士に見えるかもしれない。
現に、彼女を見ていた数人のクラスメイトが、ニヤニヤしながら肘でつついてきた。
彼らの容赦ない追及をかわしながら、プログラムの一環である借り物競争に出場する為、スタートラインに並ぶ。
(告白はどちらからするんだろうか…)
ぼんやりとそんな事を考えていると、よく晴れた秋の空に、スタートを知らせる空砲が響いた。
中間地点に真っ先に辿り着き、置かれている白い紙を一枚選んで開く。
中に書かれていた単語を読み、短く舌打ちしていると、すぐに後ろに二位の生徒が迫ってきていた。
オレは急いで、観客席の最前列でさっきから声援を送り続けてくれている件の女の子の所へ向かう。
「一緒に来て」
「え…」
有無を言わさず腕を掴んで、グラウンド内に引き入れる。
細い腕を力一杯引っ張っていたことに気付き、慌てて「手を繋いで」と伝えたら、彼女は一瞬ぽかんとした表情になったが、言われた通りに差し出した手を取った。
「何で私なの?紙には何て書かれてたの?」
ゴールテープが見えてきたところで、息を切らしながら彼女が問う。
「彼女」
一言、素っ気無いほど短く答えると、はっと息を呑んだのが背中越しに感じ取れた。
「後でもう一度ちゃんと言うけど、オレの彼女になるのは嫌かな」
「嫌なわけ、ないじゃない…」
ゴールテープを切っても、手はまだ繋がれたままで。
彼女はほんのりと朱に染まった頬を俯けて答える。
いつの間にかオレ達の周りにはクラスメイトの人だかりができていて、やんやの喝采と祝福の紙吹雪が二人の頭上で舞っていた。

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