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■36 クロと献立
(燐+クロ)

「クロ、今日は肉じゃがだけど、食うかー」

『うわぁっ、にくじゃがっ!たべる、たべる!』

「じゃがいも熱いから気をつけろよ。お前、まんま猫舌だからな」

『きをつける!はやく、くれっ』

「ちょっと待ってろって。…ほい、お前の分の肉じゃが。雪男今日帰るのおせーとか言ってたし先に食っていいぞ」

『いいのか?じゃあ、さきにいただきますっ、はふはふっ』

「あはは、落ち着いて食えよ。また舌やけどすんぞ」

『………』

「クロ?」

『………』

「クロ、どうしたよ。いつも美味しい美味しいって食ってんじゃん。…また火傷したのかぁ?だーから言ったのに…」

『ふむ、きょうはしょうゆをたしすぎたようだな。しかもゆきおのかえりがおそいからということをりゆうに、てをぬいたかんがある』

「えっ?」

『…あっ。…いや、なんでもないぞ。おいしいぞっ』

「いや、えっ、…今普通に…その、おっさんみたいに喋ったよな」

『なにも、いってないぞ』

「…いや、醤油足しすぎたって言ったよな。確かに今日ぼんやりして醤油がドボッと行ったんだけど。それに俺、雪男の帰りが遅いとか遅くないとかで手ぇ抜いたことないんだけど」

『そんなこと、ないぞ。りんのりょうりは、いつもおいしいぞっ』

「…もしかして毎日そうやってこっそり俺の味の批評をしているのか?」





「…あれ、兄さん今日の料理どうしたの。いつも美味しいけど、最近こう…味付けが更に繊細になってるよね。ホントに料亭みたい。…兄さん、少しはやっぱり板前になりたい気持ちがあったの?」

「…いや、…料理を…辛口評価されるのが…意外と初めてだったっていうか。俺、みんなが褒めてくれるから無意識に完璧だと思って付け上がってたのかな」

「は?どうしたの、急にらしくないこと言い出したね…」

「いいんだ。お前が食ってるその肉じゃがが美味しいなら俺は別に何も言うことなんてない」

「…そう?…僕は美味しい料理が食べられて嬉しいけど、……あれ何か落ちこんでない?」


<…そんなクロは嫌だ。おわり>


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