■34 どこまで神経があるのか
(雪+燐でも雪×燐でも)
「…兄さんの尻尾って、どこまで感じるの?」
「はぁあ?」
雪男がそう突然問うてきたので、燐は思い切り眉をよじった。
「その尻尾って、どこまで神経があるの?」
「…しんけい?」
「見た感じ、先までちゃんと動かせるみたいだけど、そこまで骨が在るの?」
「……骨……」
「もういいよ、自分で確かめるから触らせて」
「あっ、おいっっ」
むんず、と雪男は燐の尻尾の先を掴む。
先は飾り毛とでもいうのか、触っても燐は何も言わなかった。感触もふさふさしているだけで、先端は骨もなく、神経も通ってないらしい。
無言でその尻尾に触れる指を段々と付け根へ向かって進めていく。途中から軟骨のようなものを感じた。燐を見ると目を細めて眉根を寄せた微妙な表情をしている。
「もしかしてもう痛いの?」
「痛くはねーけど、気持ち悪い」
「ふーん」
「おいっ、気持ち悪いっつってんのに無視かよ」
むにゅ、と掴むと燐が「ぎっ」と呻いた。さすがに握ると痛いのかもしれない。
「もういいだろ、それ以上は痛い、離せっ」
「………いや、面白いからもうちょっと」
「面白くねえよこっちは!離せって」
もっと付け根に近いところへ手を進めて、さらに強く握ると、いよいよ燐は大声を上げた。
「いってえええええっ!離せ!痛い!いて、いてえっ」
「あー、この辺からもう痛いんだ…ふうん…」
「感心してないで離せっつってんだよメガネッッッ」
「ちゃんと神経通ってるんだね」
「バカにしてんなよ!神経くらいある」
「無神経なんて言ってないよ。…実際兄さんには無神経なとこがあるけど」
「バカメガネッ、何か恨みでもあんのか!離せ!」
「やだ、人の弱みって握ってると面白いだろ」
「こっちは面白くもなんともねえぇぇっ、痛い!」
けれど雪男の手から逃れようと尻尾を動かすと、いよいよきつく握られるだけで、燐はしばらく弟から逃れられなかった。
<今更尻尾ネタ。終>
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