■89 寝れない
雪燐
「雪男―」
「……」
「雪男―」
「……」
「起きてんだろ、無視すんな雪男っ」
「……」
「おい、聞いてんだろ、このホクロ!メガネ!」
「…あーもーうるさいなぁ…なに」
「ほらーやっぱ起きてんじゃん!なぁ、俺寒いんだけど」
「ふぅん。おやすみ」
「おい!!こら!!聞けよ!!冷てーな!!あまりの冷たさにお兄ちゃんびっくりしたよ!!」
「……」
「なー、寒くて足が冷たくて眠れないんだけど」
「面倒な事言うなぁ…」
「足ちょう冷えてんだけど」
「そのうちあったかくなるって…」
「無理だ、もうこの状態で何分いると思ってんだ」
「…なんで今そんな事言うの…。修道院にいたときは一人で大人しく寝てただろ…なんで今更寒いだの何だの言うわけ。兄さんもいい年なんだから我慢して。クロがいるでしょ」
「おめーと同じ年だろ…今年の冬は寒さが違うんだよ」
「そうかもしれませんね。今年の冬は大変冷えますね。…おやすみ兄さん」
「おい、適当な事言ってんな!聞けよ!」
「………」
「あっ…また無視決め込んで寝やがった…!くっそ、いいよ、最終手段に出る」
もぞもぞ
「ぎゃっ!?」
「ふはー!あったけー!」
「何してんの!!何勝手に人の布団に入り込んで来てんの!!」
「寒いのでね…ふっふ」ドヤ顔
「なにその得意げな表情!?」
「うぉー、雪男あったけー♪これでぐっすり眠れるぜー」
もそもそもそ
「ちょっ、…くすぐったいっ、お腹さわらないでよ!!」
「腹さわってねーよ、クロ(※一緒に連れ込んだ)だよ。いーじゃんけちけちすんな…おっと、しっぽも布団の中に入れておかねーと。出しっぱなしだとしっぽ冷えてつめてーからな…」
「…もう、兄さんのバカ」
「えー?」
「……こうやって寝るの何日目だと思ってるの」
「うん、わかんね。そういや昨日も一昨日も一緒に寝たなー」
「……もう、別々に寝てるのがバカみたいだよ」
「ホントだ。…ていうかさ、逆になんで俺たち別々に寝てんの?」
「え」ぎょっ
「もうさー、寒ぃんだから毎日一緒に寝ればよくねー?」
「そ、そんな事簡単に言わないでよ…」
「いーじゃん、明日からも毎日一緒に寝よーぜ、な?」
「……」
「イヤなのか?」
「いやじゃないけど…」
「だったらいいだろ?お前も俺もあったけーし、クロも間にはさまってあったけーしいーじゃん。暖房とか必要ないじゃん。エコじゃん。省エネじゃん」
「まぁ、それは、その、…そうだけど…」
「なんだよ?」
「……ううん、なんでもない。…早く寝て」
「えー?」
「僕は明日早いんだから、さっさと寝てっ」
「…もしかして今更照れてんの?顔赤ぇぞ」
「!!赤くなんかないっ」
「きひひ、何焦ってんだよ。こんな暗さじゃ顔色なんてわかんねーだろ」
「………っ」
「もしかして本当に赤くなってた?」
「うるさい…」
「なんだよ、今更俺と一緒に寝てドキドキしてんのか?かわいーな雪男は」
「あーもー!うるさい!寝てってばっ!!」真っ赤
ちょっと暑くなっちゃった
<終>
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