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■84 またこんなことで悩んでるの
雪+燐

「……ゆきお……」

「ハハ…なんかスッゴイめんどくさいテンションで呼んできたね。一応どうしたのって聞いてあげるけど内容によっては無視するから」

「無視すんな!!………あのな、俺、尻尾について気になることがあるんだ」

「はいはい、あー面倒な予感がする。どうせまたズボンに尻尾穴つけるだの尻尾にマフラー巻くだの言い出すんでしょう。知らないよ。自分でなんとかして」

「こらー!!話を聞く前に内容決め付けんな!!」

「兄さんが尻尾関連の事言い出したら大抵どうでもいいことだから…」

「俺の今までの真剣な悩みをどうでもいいとか!?なにそれ!?冷たくない!?雪男ちょう冷たくない!?………とにかく聞いてくれ。な。………青焔魔ってどんな顔だと思う?」

「………え?………なに、急に。なんでそんな事言い出すの?僕らの父親は神父さんだけだって前言ってなかった?」

「言ったよ。もちろん、俺とお前の父親はジジイただひとりだ。俺は今まで生きてきた中でジジィ以上にかっこいいやつも強い奴も見たことない。ジジィが一番だ。……でもさ、実際のところ血は繋がってねーだろ。俺とお前がサタンの血を引いてるのはどうしようもない事実」

「そうだけど…でも何で今更?そんなに血のつながりが気になるの?…そりゃあ、兄さんはバカだと思ってるけど繊細なところもちゃんとあるって知ってるよ。でも思いつめるほどだなんて…もしかして今までずっと悩んでたの?」

「……例えば顔とかが俺かお前とそっくりで、俺の焔以外にも万が一何か受け継いでたらどうする?」

「…どういうこと…?何が言いたいの?」

「……実はな」

「うん」

「落ち着いて聞けよ」

「うん」

「実は俺な、」

「…うん」

「……最近抜け毛がひどいんだ……」

「……………………えっ?…ふぅん、……えっ?」

「昨日さ…風呂入ってたらさ………頭はいつもと変わんねーんだけど、…でもすっげぇ抜けてんだよ、尻尾のとこのさ……毛が、ごっそりと。お前はきっと知らないだろうけど俺はこっそりとゴミ箱の奥にそれを入れた。俺の後に風呂に入ったお前に見られたくなかった」

「………そ…う」

「ほら、ハゲって遺伝するんだろ?…ジジィはかっこよくても養父は養父だ。…実父が禿げてたらどうする…?手遅れじゃね…?これは俺だけの問題じゃない、お前にも関わってくる。雪男、お前、自分がただの人間だから平気だ何てタカくくってねーよな?油断すると…やばいぞ」

「………」めんどくせえー

「オデコ見せてみろ」

「…いやだ」

「何でだ!……ハッ、…やっぱりお前も兆候が…その分け目はごまかすため…に…?」

「ちげえええよ」

「いいから見せろよ!安心しろ、兄ちゃんはこのこと誰にも言わねー」

「やめてよ」

「クソッ、魔の遺伝子がお前にまで…」

「いやいやいや…こっちまでハゲって決めんなよ」

「なんでこんな運命に翻弄されなきゃなんねえんだ…!」ダンッ

「かっこよく言うなよ」

「実は今日も風呂に行くのが怖くてしょうがねえ。俺は真実を目の当たりにしたときちゃんとそれと向き合えるのか……正直、わかんねえんだ。ゾッとするぜ…」

「…そう」

「俺は…俺はジジィみてーなかっこいい白髪になりたい…!!」

「そんな夢知らねーよ」

「あとな…毛が抜けた後の尻尾どうなってると思う…?」

「さぁ…」

「皮膚、白いんだぜ…知らなかっただろ…?」

「はぁ(興味ねえー)」

「このままじゃ俺は尻尾がまだらになっちまう。それだけは絶対避けなきゃなんねえ」

「そうだね(棒読み)」

「俺……勇気出して風呂行って来るわ」

「はぁ」

「見てろ…俺は悪魔の遺伝子なんかに屈したりしねえ」

「何言ってんの?」

「ただ、万が一の事があった場合…お前に頼みたい事がある」

「何言ってんの?」

「お前を悪魔薬学の天才と見込んでのことだ。…天才なんだろ?兄貴からの一生のお願いを聞いて欲しい」

「ここで一生のお願い使っちゃうの?」

「毛生え薬を……毛生え薬を作ってくれないか…!!俺は考えたんだが、これは薬局に置いてあるような人間用じゃ効かねーと思うんだ。だから…」

「………」

「じゃあ、俺そろそろ行くな…!」

「うん(もう聞いてない)」

「大丈夫、俺は大丈夫、平常心、平常心」

「うん(聞いてない)」

「運命を乗り越える…!」

「うん(聞いてない)」

「じゃあな、雪男!またあとでな!お前も祈っててくれよな!」

「うん(聞いてない)」

 数分後

「………ゆきお………」

「(無視)」

「………雪男」

「(無視)」

「ゆきうおおおおおおおお!!」

「うるせーよ」

「やっぱ抜けてた!!なんで!?俺何も悪い事してなくね!?それともこれがあれなの、お前がホラ、言ってたさぁ、“死んでくれ”とかそういうのがつきまとうってことなの!?死ねってこと!?神様は俺を殺したいの!?俺は存在そのものが罪なの!?」

「…いやいやいや…僕の台詞その抜け毛と関連させるのやめてほしいんだけど…あとなんかカッコいい苦悩みたいに言うのやめてくれる」

<あとでわかったことだが、ただの毛の生えかわりの時期だった>


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