(ああ、やっぱり彼はすごいなぁ)

 外界の声に耳を澄ませていたVは、不意にふわりと柔らかく笑むとそう口にした。傍にいなくとも分かる、この上無い程に優しい声音の言葉は確りと彼の、彼らの耳にも届いていた。Vの言葉に、彼と同じく外界の様子を窺っていた二人の兄も小さく笑んで、ひとつ頷き同意を示す。

(どうなることかと、最初は心配したけどな)

 へらりと困ったように笑ってWはそう零した、確かに当初は不安だった、本当に彼が自分たちを救ってくれるのかどうか、最愛の家族を揃って復讐という暗闇から掬い上げてくれるかどうか。しかし今となって、三人はそれにこの上無い程の絶対的な確証を抱いていた、彼ならば、きっと救ってくれるだろう、そう心の底から、思えるようになった。
 くすくすと笑い声を零す二人を見遣ったXは、安堵したように眼を細めて二人に声を掛ける。

(彼なら大丈夫だろう、少なくとも私はそう思うが)

 その言葉に呼応するようにして、VとWも続けた。

(勿論、僕だって信じていますよ)
(当然俺もだ、あいつならきっとやってくれるさ)

 彼なら、あたかも太陽のような輝きを持つ彼ならば、闇に駆られた父を救ってくれる。そう信じて三人は再び眠ることにした、たった一人の少年に遠く思いを馳せながら。

(おやすみ、)

 三人の意識はゆっくりと、暖かな光の底へと沈んでいった。どうか、夢の中で君と出会えますように。



鷺 草



2012.10.28


 

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