気が遠くなるほど緩やかに流れる真っ白な雲を眺めながら、実に喧しい街をふらりふらふら、行く当てもない旅人のように歩いて行く。群れる白い雲の最中に真っ直ぐな飛行機雲が一本突っ切っているのを見つけて、それに何とも言えない気分にさせられた。
 今までだったら、お世辞にも良いとは言えない仲間達と屯したり馬鹿をやったり、暇なときに憂さ晴らしのごとくやらかすことは色々有ったのだが、今となってはそんなことも一切と言っていい程無くなってしまった。本当に平和ボケしてしまったものだと、独り苦笑する。そろそろ秋に差し掛かろうかという季節であるのに、太陽は相も変わらず休み無くぎらぎらと照りつけて、その季節らしからぬ温度を生み出していた。

(あっつ、)

 この時期にシャツ一枚だというのに寒さは欠片も感じない、寧ろ少々肌が火照る程の暑さが襲いかかってきた。どうやら要らぬサービス残業をしてくれているらしい太陽が、真っ向から俺たちを射貫いてくる、全く、冗談じゃない。ざわ、と。一瞬だけ吹き抜けた風が木々を揺らす音ですら、まるで真夏の蝉の唄に聞こえた。

(馬鹿じゃねーの)

 まるで衰えを知らない勢いで照りつける太陽を睨み付ける。それでも太陽はひたすらにきらきらと、真っ直ぐに世界を照らすだけだ、そのすがすがしさと真っ直ぐさがいっそ腹立たしい。視界一杯に広がる青と、白と、むかつくほどに真っ赤な輝き。それを追いかけるように天を差すビルの群れ、無関心に通り抜けていく人々の雑踏と喧騒。人のにおいが鼻につく。

(あ、)

 ふと、隣を通り抜けた太陽の色が視界の端に小さく小さく、顔を覗かせる。仄かな日差しのにおいが乾いた街に優しく浸みた。日々胎動する街の中、太陽が俺に振り向くまで、あと少し。



向 日 葵 の 街


2011.12.01


 

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