にぃ、と笑みを浮かべて此方を見やる青年、Wに遊馬は困ったように視線を返した。細い首筋を、淡く色づいたまろい頬を辿って、Wの指先は遊馬の目元へと辿り着く。瞬きをする遊馬の瞳を見つめ、口を開いたWの声音はそれはそれは嬉々とした、聞く者が聞けば寒気を感じるようなもので。

「なァ、遊馬」

目元を、瞼を、震える睫毛までをも辿るように這う指先を甘んじて受け入れながら、遊馬はきらきらと耀(かがや)く瞳をWに向ける。真っ直ぐな視線を受け、Wは弛く熱く、喩えるならば至高の芸術品を目にしたような感嘆の溜め息をついた。

「お前のその美しい瞳を、俺にくれないか」

幼い子供が親にねだるように(言うなれば何処までも無邪気かつ純真に)、いとも残酷な言葉が吐き出される。ルビーの瞳を静かに伏せて、遊馬は眉を寄せ、困ったように微笑んだ。

「ごめん、先客が居るんだ」

ぽつりと呟かれた言葉に、Wの顔が哀しそうに歪む。やはり子供のようにすがり付いて甘えてくる一回りも二回りも躯を優しく受け止めながら、遊馬は再び、寂しげに謝罪の言葉を呟いた。

「ごめんな、」

慈愛に満ちたその言葉は、深く、深く、青年の幼い心を抉っていく。遊馬を抱き締め束縛するWの腕に、ほんの少しだけ力が籠った。





南 燕



2012.01.14

 

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