普段は家事とかがあって忙しいけど、その日は珍しく時間が空いて親友と一緒にのんびりと帰宅していたのを覚えてる。他と比べて人通りの少ない通りに面した公園を通った辺りで、その事件は発生した。公園の中から響いて来たのは日常生活で聞き慣れた声。友人に断りを入れて声の元へと駆けていけば案の定、七つ年下の弟がいかにも意地の悪そうな上級生に囲まれてなにやら因縁をつけられているらしい。会話内容はよく聞き取れなかった、けど。親がいないのに、なんていう言葉だけ聞き取れた。

(あー、腹立つなぁ)

小学生相手に大人げないかなぁ、とも思ったけど正直身内に対する暴言に耐えられる程あたしは大人じゃなかった。慌てた友人の制止の声を振り切って、公園の入り口のポールを飛び越えスカートなのも構わず全力疾走。足下はいかにも女子高生って感じのローファーだったから大して速くは無かっただろうけど、小学生相手には十分だった。逃げようとするガキ大将の首根っこを引っ掴んで引き倒す、腰を抜かした弟が涙と鼻水まみれの顔にくっついた目をまんまるにするのが見えた。

「…ねえ、ちゃん?」

「遊馬、あんたも男の子なんだから、」

もうちょっと強くなりなさいよ。台詞の最後は不思議と喉の奥で引っ掛かって出てこなかった。涙と鼻水でぐっしゃぐしゃの顔を不格好に歪ませて笑おうとする弟の姿は、その日からずっと、今に至るまで長い間、私の瞳に焼き付いている。思えば、弟の無茶はあの頃からの出来事だったかもしれない。



夕 暮 同 胞 邂 逅 事 変


2011.12.08

 

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