ばいばいだとかさよならだなんて、世界でいちばん聞きたくない言葉だ。みんなそうだ、そんなふうな事を言って俺を置いてどこかにいっちゃうから。俺だけを世界に独りだけ残して、みんなどこかにいっちゃうんだ。誰かがさよならを告げる度に、何時だって呼び止めたい衝動に駆られて仕方がなかった。だけど、言っちゃいけない。それはきっとさよならを告げた人への冒涜だから。誰だって辛いのを圧し殺して、大切な誰かにさよならを告げているんだ。そんな決意を殺すのは、絶対にしてはいけないことだから。

(でも、)

何時だってそうだった。呼び止めて、名前を呼びたい衝動を圧し殺してみんなを笑顔で送り出して。どれほど別れが不安でも、どれほどひとりが寂しくっても。だけど、今だけは、この瞬間だけは。

(おわかれだ、なんて)

またひとり、俺をひとり残して世界からいなくなってしまう。どこか寂しさを浮かばせる世界が、すみっこから、ほんのちょっとだけ滲んでいく。目の奥があつい、じわりと焼き焦がすように広がる熱。どろり、融解してしまった彼の顔が困った色でいっぱいになった。

「いやだよ、」

そうして俺は初めて、誰かを世界に引き留める。もう、ひとりにしないでなんて、女々しいきもちで一杯の世界に。



O v e r ! !


2011.12.01
 

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