水面下の罠


私がこの四天宝寺中学校に転校して来てから、3日が経った。
クラスにも馴染めて来たし、隣の席の白石君や忍足君が気を使ってくれるので、とても助かっている。


「あ、雨宮!丁度良え所に」

丁度職員室の前を通りかかった時、担任の先生と、見覚えのある女の子が居た。
担任の先生に呼び掛けられたので、私はそちらに歩み寄った。


「なんですか?」

「悪いんやけどこの資料、この子と一緒に運んでやってくれへん?南だけやと重くて持てないらしいねん…、俺は今から会議やから、頼んだで!」

「はい、分かりました」

足早に去っていく先生の背中を見送り、南と呼ばれていた女の子に目を向ける。
やっぱり、あの時の女の子だ。


「…もしかして、あの時の子、だよね?」

「覚えててくれたんですか…!」

やはりあの時の、校舎裏に倒れていた女の子だ。
女の子があまりにも嬉しそうに言うので、私も思わず頬が緩んでしまった。


「怪我は大丈夫?」

「はい!…あ、あの、改めて、2年7組の南真樹と言います!」

「3年2組に転校してきた雨宮瀬奈です」

「3年2組…」

一瞬、南さんの顔が歪んだような気がしたけど、気のせいかなと思い、気にしないことにした。


「…これ、資料室まで?」

「はい!」

「じゃあ運ぼうか!」

南さんが元気にはい!と言ったので、私たちは資料の束を抱え、資料室を目指した。



▽▽▽



「え、必ず部活に入らなきゃいけないの…?」

他愛も無い話をしながら資料室に向かってる私と真樹ちゃん。(瀬奈先輩って呼ぶので、真樹って呼んでください!と言われたので、そう呼ぶことに。)
ふと、真樹ちゃんが思い出したように「瀬奈先輩って部活何入ったんですか?」と真剣な表情で聞いてきたので、入るつもりは無いと答えた。
が、四天宝寺は必ず部活に所属しなければいけないらしい。
特に入る予定は無かったんだけど、どうしようかな…。


「…瀬奈先輩」

「何?」

「…もし、良かったら、男子テニス部のマネージャーになりませんか?」

「テニス部のマネージャー?」

マネージャーか。
でも私、テニスの知識全く無いからな。


「…私、ほぼ全校生徒から虐めを受けてるんです」

真樹ちゃんの言葉に、私は思わず足を止めた。
真樹ちゃんは俯いているので、表情は伺えない。


「男子テニス部は人気があって、そのマネージャーをやってると言うことと、私の事が単に気に入らないと言う理由で…」

「…やっぱり、あの時の傷は」

「はい、殴られました」

私は思わず顔を歪めた。
この子は、そんな最低な行為に耐えてきたのだろうか。


「だから、私に暴力や陰口を言わない瀬奈先輩が側にいてくれたら、なんて、迷惑ですよね」

「そんな事ないよ!」

真樹ちゃんがあまりにも悲しそうに笑うので、私はすぐに即答した。


「…本当ですか?」

「うん、だけどもう少し考えさせて貰っても良いかな?」

「はい!」

真樹ちゃんがにっこりと笑ってくれたので、私も笑い返した。
…マネージャーか。
真樹ちゃんから入って欲しいって言われたし、前向きに考えよう。


「…もう少しで、捕まえられる」

真樹ちゃんがポツリと零した言葉は、私の耳には入らなかった。


*2012/11/01
(修正)2015/12/27

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