変貌


可笑しい。
南に対して、異変を感じとったのは俺だけじゃないはずや。
南 真樹。
俺と同じ2年で同じクラス、そしてテニス部のマネージャー。
そしてほぼ全校生徒から虐めを受けとる。
それは南にも原因がある訳やから、俺は口出しせぇへんかった。
根っからのミーハーでぶりっこ。
それが南に貼られているレッテルや。
的を得とると素直に思った。
確かに、南はぶりっこやしうっといし、ミーハーやし。
やけど、仕事だけは真面目にやっとった。
せやから俺は普通に(と言っても女嫌いの俺は睨むか無視するかやったけど、毒吐かなかっただけましやろ)接しとった。

そんな南が変わったんや。
いつもは人の名前を勝手に呼び、甘ったるい声でタオルを渡して来はるのに。


「はい、財前君」

俺は幻でも見たんやないかと自分の目を疑いたくなった。
部長も謙也さんも、他の先輩も、皆驚いとった。



▽▽▽



「おい」

「ん、何?」

1時間目が始まる前、今はSHR中や。
ちなみに南は一番窓側の一番後ろ。
俺はその隣。
南の机は黒や赤のマジックで“死ね”、“消えろ”など暴言が書いてあった。
いつもなら辛そうに眉を寄せてから、すぐに俺に話しかけよる。
せやけどやっぱり今日は違ったんや。
机の落書きなんか見えておらん様に椅子に座り、ボロボロの教科書なんかに見向きもせずに、窓の外を見てはる。
せやから俺は珍しく自分から声を掛けた。


「…お前、どうしたんや?」

「何が?」

「何か今日、可笑しいやん」

「そうかな?…あー、そうかも」

何なんや、コイツ。
どっちやねん、はっきりせぇや。


「…私、見つけたんだ」

「何をや」

「…天使」

俺は思わず、言葉に詰まってしもた。
…コイツ、とうとう壊れよったか?


「天使って何や」

「天使は天使じゃん」

南は俺にコイツ、何言っとるんや?みたいな視線を向ける。
…何やイラッと来るわ。


「私、きっとあの人さえ居れば生きていける」

南の目は、俺を見とる。
せやけど俺はそこに映っとらん。
南の目に映っとんのは、その“天使”に対してのどす黒い愛情と依存や。
俺の背中に冷や汗が流れた。
アカン、壊れとる所やない。
狂っとる。


「…この学校に転校して来るんだって」

「…天使が?」

「うん!嗚呼…何年の所に来るんだろう、私のクラスはハズレみたいだし…早く会いたいな」

南は再び窓の外に視線を移し、ポツリとそう言った。
少し、南に恐怖を抱いた、せやけどそれより、その“天使”に俺は興味を持った。
どんな奴なんやろうか。
“天使”、会うてみたいわ。


*2012/11/01
(修正)2015/12/26


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