視界に入る


「やっぱお勧めは関ヶ原の戦いや!」

うっざ。
…思わず本音が出てしもたけど、しゃーないわ。
やってほんまにウザイんやし。
何で社会とってしもたんやろ…、いや、社会や無くても、この学校の先生のテンションのウザさは同じか。


「…暇や」

「財前、暇そうやなぁ…」

「当たり前やろ」

俺は前の席に座っとった比較的仲のええ奴にそう言い、窓の外に視線を移した。
嗚呼、ほんまに暇や。
選択授業は週に3回はある。
せやけど授業はあんまし進まん。
理由は分かるやろ。
この学校自体が可笑しいんや。


「ふあぁ…」

欠伸を噛み締めてから、俺は机の影に隠れて携帯を弄る。
お、このグループのCD来月に出るんか…、金貯めなきゃアカンわ。


「でな!って財前!自分話聞いてへんやろ!」

「あー、すんません」

「棒読みやないか!」

あー、うっとい。
この先生のせいで、この教室に居るやつらからチラチラと視線を感じる。
主に女子からの。


「…うっとい」

ほんま女子って何やねん。
キャーキャーワーワーうっさいねん。
顔さえ良ければ近寄って来るし。
香水はキツいし。
俺の中の女子の印象は最悪や。


「…ん?」

「何や」

「これ、描いたん財前か?」

そう言って机を指差す友人。
その指の先を見てみると、机に円が描いてあったんや。
なんや、これ。


「俺やない」

「そか」

そう言いながら笑う友人。
ええから早よ前向けや。


「こらっ!加藤前向けや!」

「わっ、堪忍な!」

はっ、ざまあみろ。
先生に怒られた加藤は直ぐに前を向きよった。
…暇やな。
笑い声で騒がしなった教室内を尻目に、俺は机の門に描いてある円をじっと見る。


「…何やろ」

円、丸?
ボールか?
こうも暇やと、何かに意識を集中せぇへんと、時間が進まん気がして、この円が何なのか考えてみることにした。


「…なぁ」

「何や?」

「自分、コレ何やと思う?」

俺は加藤の肩を叩き、丸?を指差しながら頬杖をついた。
加藤は眉を寄せ、少し唸ってから、何や閃いたように表情を明るさせた。


「テニスボールちゃう!?」

「んな訳ないやろ」

何でテニスボールやねん。
…俺も一瞬思うたけど、テニスボールを描くんならテニスボールについとる線も描くやろ、多分。


「じゃあ、財前は何やと思う?」

「…白玉」

「…それ、自分が食べたいだけちゃう?」

加藤は苦笑いをし、前を向いた。
しゃーないやん、食べたいんやから。
そう思いながら円を見つめとると、ほんまに白玉にしか見えんなって来たわ。
俺はシャーペンの芯を出し、白玉(仮)の下に“これ何や”って書いた。
…返事、返ってくるんやろか。



*2013/02/22
(修正)2015/12/23




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