寒空の日


「この時代、ごっつ強い武将が居ったんや!ほんでな…」

ふわぁとだらしなくでた欠伸を噛み締め、じわりと視界を歪ませた涙を拭う。
ここは社会科教室(本当は多目的教室って言うらしい)。
2年生の教室がある3階の1番端の空き教室だ。
選択授業(社会)しか使わないので、皆は社会科教室って呼んでる。
選択授業で社会を選んだ私は、この教室の1番窓側の列の1番後ろの席と言う所謂転校生席を手に入れた。
まぁ、私は本当に転校生だからね…、全く関係ないけど。


「真田幸村は格好良かったんやで?」

「先生!ええから早よ授業進めてや!」

どっと笑いが起こる教室。
ごめん、私はどこが面白かったのか全く分からない。
この四天宝寺中学校に転校して来てから3ヶ月が経った。
最初は聞き慣れなかった関西弁や、この学校特有の笑いが入る授業にも慣れた。
慣れって怖い。
そうしみじみと思いながら窓の外を見た。
暦の上では冬。
11月下旬の寒空の下、校庭ではサッカーをしているクラスがあった。
あれは…2組と7組かな?
まぁ、どうでも良いけど。


「お前らなぁ!真田幸村の良さを分かってへん!」

授業…、先生の話で終わりそうだな。
私は持っていたシャーペンをくるくると回した。
因みに、選択授業はクラス合同です。
私のクラス(8組)は4組と合同。
…どうでも良い情報だったかな。
カシャンと音を立て、シャーペンが落ちた。
ペン回し、下手なんだよね。


「由梨ちゃん、暇そうやな」

「うん、歴史上の人物に興味ないんだよね」

私の前の席に座っている友人が苦笑しながらそう言った。


「そらそうや…、あ!あれ財前君やん!」

「財前…?あぁ、テニス部か」

友人が窓の外を見て、その、財前君を見つけたらしい。
この四天宝寺中学校にはアイドルみたいな存在の男子テニス部がある。
財前君はテニス部のレギュラーで同じ学年で7組(友人情報)。
顔は所謂イケメンらしいが、両耳にピアスを付けていて、人とあまり話さないらしい、特に女子が嫌いらしく、話かけたら毒を吐かれるらしい(友人情報)。


「目の保養やわぁ…」

「良かったね」

「由梨ちゃん反応うっす!」

「いや、だって興味ないもん」

白井先輩、ん…白石だっけ?
白野(多分)先輩が一番人気あるらしいけど…、そもそもテニス部に興味が湧かない。


「由梨ちゃん、変わっとるな」

「…そうなのかな」

友人は再び校庭に視線を移した。
あー…暇だな。
机の隅に、私が今無性に食べたくなった白玉を描く。
…うん、すごく上手く描けた!


「由梨ちゃ…何やそれ」

「何に見える?」

「テニスボール」

聞く人を間違えた。


「…白玉だよ」

「何で白玉やねん!」

本場のツッコミを貰った所で、丁度チャイムが鳴った。
やっと授業終わったよ…。



*2013/02/18
(修正)2015/12/22



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