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出逢い


「サツキ様、当主様がお呼びです」

月日が流れ、私はもう6歳になっていた。
精神年齢はもっと上なのだが、敢えてそこは伏せておこう。
このサラヴィア家の長女として生まれ、もう6年も経っているのだ。
月日が経つのは本当に早いと身を持って体験した。
幸か不幸か、前世の記憶はいつまで経っても消えてくれない。
あんな忌まわしい記憶、早く消えて欲しいと願っているのに。


「はい、今行きます」

どうやら、私が生を受けたこの世界は、私がいた世界とは違うようだ。
パラレルワールド、とでも言うのだろうか。
このサラヴィア家、あちらの世界には聞いたことのない家業を引き継いでいるのだ。
この一家が代々引き継いできた仕事、それが“暗殺業”なのだ。
それも、暗殺業界で1位、2位を争う程の腕前。
これが分かったのは最近だ。
3歳の頃、血まみれで帰ってきた父親を見て、その生臭い匂いに思わず吐き気を催したことが懐かしい。
その後から暗殺教育が始まった。
気配を消し、感情を殺し、確実に相手を仕留める。
念という私の世界にはなかった能力をを駆使し、相手が死に気づく前に殺す。
お父さんの仕事に着いていって見た光景が忘れられない。
あんなに人はあっさり死んでしまうのだ、と何処か冷静にその死体を見続けている私がいた。
ふと、大きな姿見の前を通りかかる。
名前だけならまだしも、容姿も同じなのだから本当に気味が悪い。
右目の真っ赤な瞳は眼帯で常に隠している。


「ほんと、気味が悪い」

「何か仰いましたか?」

「ううん、何も」



▽▽▽



使用人に連れてこられた応接間の扉に立ち、軽くノックをする。


「お父さん、サツキです」

「入りなさい」

扉をゆっくりと開け、部屋の中へと入る。
応接間に備え付けられている黒張りのソファーに腰をかけているお父さん。
そしてその反対側に向かい合うように設置させているソファーに座っている、恐らくお父さんのお客様であろう方々に一礼をする。


「失礼します」

「サツキ、こちらサラヴィア家と仲良くして下さっているゾルディック家の方々だ」

お父さんはそう言ってソファーに座っていた2人のまだ顔にあどけなさが残る青年と、威圧感がある男性を紹介してくれた。
ゾルディック家、暗殺業界で聞いたことのない人はまず居ないであろう、このサラヴィア家と並ぶか、それ以上の腕前を持つ一族である。


「こちらは私の娘です、サツキ、挨拶を」

「初めまして、サツキ=サラヴィアと申します」

「シルバ=ゾルディックだ、宜しく」

「…イルミ=ゾルディック」

ふと、既視感を覚えたがそれを振り払い、再び一礼をする。
何故、既視感など覚えたのだろうか。


「サツキ、私はシルバと話があるから、イルミ君に屋敷でも案内しなさい」

「わかりました」

一礼し、席を立ったイルミさん共に部屋を出る。
このイルミと言う少年の目、無機質で何の感情も読み取れず、少しだけ畏怖を覚えた。


「…君、名前何だっけ」

前を向きながら廊下を歩き始めた私に、イルミさんは少し後ろを歩きながら口を開いた。


「サツキ=サラヴィアです」

「何歳なの?」

「今年で6歳になりました」

「ふーん、見えないね」

イルミさんはそう言うと、口を閉ざした。
見えない、か。
確かにこんな6歳児、前世の世界で居たら気味が悪いとまた阻害されていたかもしれない。


「…イルミさんは何歳なんですか?」

「14」

「…そうなんですか」

オウム返しのように、イルミさんの年齢を聞いてみたが、まさか14歳だったなんて、少しだけ驚いた。
大人びていたので、てっきり18歳くらいかと思っていたのに。
私たちは、そのまま口を閉ざし、廊下を歩き始めた。



*2013/08/28
(修正)2015/12/20



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