告白


「わ、私!告白する!」

いきなりですが、私、奈津は告白することを今ここに誓いました。
私のこの誓いを聞いた友達の反応は様々だ。


「ははっ、やっとなのな」

爽やかな笑顔を振りまきながら私の頭を優しく撫でてくれるのは山本君。
中学校からずっと同じクラスで野球部のエース。
誰にでも気さくでとても人望が厚く、高校生になってからは中学生の時よりも背が伸び、爽やかなイケメンへと変貌した山本君にはファンクラブまであるらしく、その人気は計り知れない。


「…ったく、随分といきなりだな」

そう言ってあからさまな溜息をつくのは獄寺君。
獄寺君は中学生の時に並盛中学校に転校してきてから、ずっと同じクラス。
なので私と山本君、獄寺君はずっと同じクラスなのだが、獄寺君曰く、山本君とは反りが合わないらしく、山本君の事を毛嫌いしているみたいだが、なんだかんだいってこうして一緒にお昼ご飯を食べてるし、仲がいい。
帰国子女で容姿も整っているので人気は鰻登りだ。


「っ、いきなりじゃないよ、ずっと前から告白しようって決めてたし!」

「その割には告白出来た試しがねぇがな」

「うっ…」

そう、私が告白しようと決めたのは随分前の話で。
確か中学3年生の時だったかな、始業式の時に告白すると決めてから早3年。
今や高校3年生だ。
月日が経つのが早いのか、ただ単に私が意気地無しなのか、どちらなのかは明瞭だろう。
そう、私は意気地無しの弱虫だ。
そんな私が最初に告白すると決めたことに、2人はとても驚いていたが、優しく応援してくれているのだ。
こんな優しい友達の為にも、自分の為にも、今度こそ告白するんだ。


「あ、3人とも此処に居たんだ」

突然響いた声に、心臓が口から飛び出しそうになった。
否、未だに飛び出しそうだ。
ドキドキと煩く跳ねる心臓の音が周りに聞こえてそうで、今すぐ何処かへ隠れたい衝動に駆られるが、それをなんとか抑えて声の主を見る。
柔らかそうなすすき色の髪に凛とした瞳、幼い頃の高い声ではなく、声代わりをして低くなった声が鼓膜から私の体内に侵入し、脳をぐわんと揺さぶった。


「ツナ君…」

沢田綱吉君、私の幼馴染で、私の好きな人。
小学校の時、私がこの町に引っ越してきてからお隣さんになった、容姿端麗で文武両道、才色兼備。
完璧すぎる幼馴染の欠点といえば、女嫌いな所くらいで。
私は幼馴染で小さな頃から一緒だから、女に分類されていないんだと思う、それはそれで悲しいけど。


「ツナ、また告白されてたのか?」

山本君のその問いに、私はピクリと反応してしまった。
ツナ君の答えを聞くのが怖い、もしツナ君が誰かと付き合うことになったら、そう考える度に泣きそうになる。


「あぁ…、全く切りがないよ」

ツナ君は私の隣に座り、疲労感漂う表情を露わにする。


「沢田、お前まさか付き合うことになったとか言い出すんじゃねぇだろうな?」

「まさか、そんなわけ無いだろ、俺が女嫌いな事、知ってるだろ?」

良かった、付き合うことにはなってないみたい。
思わず体に無意識に入っていた力を抜く。
ほっと胸をなで下ろすと、獄寺君と視線が交わった。


「…本当にすんのか?つか出来んのか?」

「する!絶対にするから!」

獄寺君の言葉に少しカチンときて、自信満々にそう言い返すと獄寺君は意地悪な笑顔を浮かべる。
そんな笑顔も様になってしまうからイケメンは狡い。


「ハッ、また年を越すんじゃねぇか?」

「…分かった!そんなに言うなら、1週間、1週間以内にする!出来なかったら諦めるから!」

立ち上がり、両の拳を強く握り締め宣言した私を、ツナ君だけが不思議そうに見つめていた。


「何の話?」

「奈津が頑張るってことなのな」

「頑張る?」

絶対に1週間以内にツナ君に告白するんだ!



*2012/05/01
(修正)2015/12/25



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