世界を知る
これからの私たちの身の置き方が決まった。
取り敢えず、アモンを攻略した人、アリババという青年に会いに行くことだ。
その為にはまた、砂漠を渡り歩かなくては行けないらしい。
「武器を買おう」
「武器?」
「うん」
私たちは再び、露店を巡る。
道なりに人に聞いたのだが、ここからバルバッドへはかなりの時間がかかるらしい。
砂漠を渡るためには、水や食料などなどを揃えなくてはならない。
「考えたんだけど、私たちの能力はここでは異物だと思うの、いくら魔法使いとかジンの金属器とかがあっても」
「まぁ、そうだな、見た目は同じかも知んねぇけど、根本的には全く違うかも知れねぇしな」
「もし、私たちの能力が異物だと知られたら」
「奴隷、か?」
アヴィの言葉に重く頷く。
どうやらこの世界には奴隷という人権も何も無い、人に労働を強いて物扱いするという最低な行為が行われている。
万が一、私たちの能力があからさまになって、売られてしまっては大変だ。
なるべく能力を使わずにいたい。
まぁ、私たちが捕まったり、誰かに負けるなんて想像が出来ないけども。
「念には念を入れて、武器を買おう」
「おう、じゃあそこら辺の武器屋に行こうぜ」
「うん」
私たちは近場にあった武器屋に寄った。
短槍や長槍、杖に刀や剣などバラエティ豊富に揃っていて、正直迷う。
なにせ私たちには能力があるから、こういう武器を扱ったことがない故に何をどう選んだらいいのか分からないのだ。
こんな物持ち歩いてたら銃刀法違反に引っかかるしね。
「あ、これアヴィっぽい」
「じゃ、それにする」
「じゃあ私のも選んで置いて」
「おう」
武器を選ぶのにこんな軽くて良いのかと思う反面、結局何を選んでいいのか分からないからいいか、と思いを振り切った。
私がアヴィに選んだのは炎をモチーフにした剣だ。
歯の部分が紅く、アヴィの髪の色に酷似していたので選んだ。
アヴィが私に選んでくれたのは日本刀によく似た刀。
柄の部分に桜の花びらのような物が描かれていて、何処か和風な感じが日本を思い浮かばせる。
私は盗賊団から奪った金貨で支払い、刀と剣を購入して、早速腰に結えつける。
「…これ、使えるかな」
「まぁ、何とかなるだろ」
「それもそっか」
後は食料と、水と着替えなどなど、必要となる物を揃えて出発となる。
いくらレベル5の“座標移動”のアヴィがいるとは言え、この世界に関してまだ何も知らないので、徒歩ではなく隊商と呼ばれる商人が様々な場所で商売をする為に使う馬車に乗せて貰うことになった。
勿論、ただではなく、乗せてもらえる間護衛をするという名目で。
刀を使ういい機会にもなるし、と揺れる馬車の中で、熟れたりんごをしゃくりと咀嚼した。
さぁ、世界を知りに行こう。
*2015/11/22