進む道


ここが、この世界が私たちのいた世界と異なると分かり、困惑しつつも、頭は冷静だった。


「異世界、なぁ…」

「でも、それしか考えられない」

知らない国名、見覚えのない世界地図、そして地図に書かれている見知らぬ文字。
店主に話を聞くと、この世界に言語は2つしかないらしい。
私たちのいた世界ではそんなこと有り得ない。
これは今いる世界が私たちがいた世界とは異なる世界だと考えた方が納得がいく。


「…これからどうする?」

「まずは情報を集めよう」

まだ私たちにはこの世界の知識が足りない。
もしかしたらこの世界の理を知れば、元の世界へ帰る方法が何か掴めるかもしれない。


「そういえば、あの盗賊団、魔法使いがどうのこうのって言ってたよね」

「ああ、そうだな…、おっちゃん」

「ん?まだ何かあるのかい?」

アヴィは露店の男性に近づき、“座標移動”を使い、世界地図を目の前で移動させた。
その能力を目の当たりにした店主は驚き、魚のように口をパクパクと開いた。


「驚いたな、君たちは魔法使いかい?」

「魔法使いとは?」

「え、魔法使いを知らないのか?」

「ちょっと複雑な事情がありまして…」

「あ、もしかして君たち、元奴隷だったのかい?」

奴隷、という言葉に驚いた。
まさかこの世界には奴隷がいるのだろうか。
私はアヴィと目伏せをし、話を合わせることにした。


「実は、そうなんすよ」

「そうか、大変だったな…、あの迷宮攻略者のお陰で開放されたんだな!」

「迷宮?」

「なんだ、迷宮も知らないのか!」

私とアヴィが首をかしげると、店主は迷宮について熱く語り始めた。
14年前から世界のあちこちに見覚えのない建物が現れた、それらは古代王朝の遺跡群だった、これらの総称が迷宮である。
迷宮の中には金銀財宝、魔法アイテムが眠っており、中でもお宝の最高峰と呼ばれるものがジンの金属器。
だが迷宮は簡単に攻略出来るものではなく、このチーシャンにあった第7迷宮アモンは凡そ10年、攻略されずにこの地に残っていた、らしい。
そして、その迷宮を攻略した人を迷宮攻略者と呼ぶ、と。
未だに理解は追いついていないが、どうやらそのジンと呼ばれている精霊の力を宿す金属器は攻略者に強大な力を与えるらしい。
その精霊によって能力も異なるらしい。
と、いうことはだ。
もしかしたらそのジンの中に、“空間移動”又は“座標移動”に酷似している能力があるかもしれない。
それを手に入れられれば、私たちは元の世界へ帰れるかも知れない。
ちらりとアヴィと目を合わせれば、アヴィも同じことを考えていたらしく、視線が交わり、力強く頷いた。


「決まったね、私たちの身の置き方」

「ああ、迷宮を攻略し、“空間移動”に似た能力を持つジンを探し出す」

「もしかしたらもう攻略されている可能性もあるから、まずはこの都市にあった迷宮を攻略した人に会ってみよう」

「ああ、そうだな」

露店の店主は私たちの話をぽかんと口を開けて聞いていた。
話の内容に驚いているのか、私とアヴィがまるで以心伝心出来ているかのように話してるのに驚いているのか、何に驚いているのかは分からないが、その表情は周りから見ればとても阿呆らしい顔をしている。


「すみません、アモンを攻略した人は今どちらに?」

「あー、なんだっけな、確かバルバッドに居るはずだよ」

バルバッド、また知らない土地名だ。
そう思いつつ、店主にお礼を言って露店から離れた。



*2015/11/22


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