赤髪の姫君


煌帝国。
確かジュダルが煌帝国は強いだとか、とうのこうの騒いでた気がする。
煌と書かれた絨毯を見てなのか、どうしてかは分からないが、ジンが再び、拳に光を纏わせ始めた。


「何よぉ、まだやる気なの、あの化物…じゃあ私が相手になるわよぉ」

「お気を付け下さいね、姫君」

「大丈夫、任せてぇ?あなたは治療をお願いねぇ」

そう言って赤髪の少女は結えられた髪に付けていた簪を手に取り、両手を組んだ。


「悲哀と隔絶の精霊よ、汝と汝の眷属に命ず、我が魔力を糧として我が意思に大いなる力を与えよ!出てよ、ヴィネア!」

その簪を天へと突き上げた瞬間、神座の周りに龍を模した水が少女の周りを囲む。
なんだ、あれ。


「行っくわよぉ!」

「彼女はジンの金属器使いか!」

「!あれが…?」

シンドバッドの言葉に、俺はもう一度少女が持っている簪を視界に入れる。
成程、あの少女のジンは水ってことなのか?
悲哀と隔絶のジンって言ってたな、それは何かしら関係があるのか?
ジンについては、まだまだ謎が深まるばかりだ。


「やってやるわよぉ、化け物め!」

少女に向かって飛びかかるジンに、少女は好戦的な笑みを浮かべる。
そんな少女に、ジンは光る両手で潰しにかかるが、間一髪で水を纏わせ、少女に怪我はない。
ぶわっという音と共に水蒸気が舞う。


「熱っ、熱魔法…、水の膜がなかったら危なかった…、せっかく集めた私の水が、蒸発しちゃうじゃない!この、死に損ないがぁぁ!」

どうやら、アラジンのジンは熱魔法を扱うらしい。
あの両手に纏わせていた光は恐らく熱魔法だったのだろう。
その手に触れられ、水が蒸発したと怒りに顔を歪めた少女の簪が水を纏い、武器へと変化した。
装飾の施された剣へと変化した簪を持ち、体ごと回転する。
遠心力が加わった剣は、そのままジンの上半身に大きな穴を開けた。


「ウーゴくん!」

「どうよ、夏黄文!」

「流石であります、姫君」

ジンは爪先から段々と煙に変わり、吸い込まれるように笛へと消えていった。
後には金属製の笛が地面に転がっているだけ。
アラジンはその光景をただただ、見つめていた。
拳をわなわなと震わせて、ただ、見つめていた。


「ジュダルちゃんとその子の具合はどぉ?」

「少女の方は軽傷でしたのでもう大丈夫です、神官殿の方は応急処置はしておりますが、治すのにはきちんとした施設が必要ですでありますね」

「じゃあ、早く行きましょぉ」

そのまま、何事もなかったかのように帰ろうとしていく煌帝国の奴ら。
そんな煌帝国を殺気をこめて睨みながら、アラジンはアタマのターバンを荒々しく取り、バサリと広げた。
それはふわりと浮き、アラジンを乗せて空へと登っていく。
そして、杖に光を集め、煌帝国の少女を目掛けて放った。
そのアラジンの瞳には、ギラギラと燃え上がる悲しみと恨みが映っていた。



*2015/12/30


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