暴走
「あいつやべぇよ!でっかい氷の槍みたいな物を出したぜ?!」
「その前に、なんであいつ飛んでるんだ…?」
「…氷魔法と、重力を操る魔法を、同時に使ってるってこと?」
「見てぇだな」
ジュダルはにやにやと嫌らしく笑みを深めた後、巨大な氷の槍を少しずつ剥がしていき、複数の氷の槍を作り出した。
「くらえ!‘降り注ぐ氷槍’!」
沢山の氷の槍が重力に従って落ちてくる。
私たちはなんとか逃げ惑う市民を助けながら、避けていく。
アラジンのジン、ウーゴくんと呼ばれているジンは氷の槍を避け、ジュダルに重い拳を振り上げた。
だが、何か丸い防御膜のようなものに守られているジュダルは無傷で、そしてジンの背後にあった多くの氷の槍に命令を出し、ジンを貫いた。
ジンは無事なのか、ゆっくりと立ち上がった。
「とんでもねぇな、そいつ!でも効いたみたいだぜ?見ろよ、傷口から魔力がもれてるぜ!」
「なぜなんだ!なぜ君は僕達にこんなことをするんだい?!」
「あ?なんで、だと…?そういや、なんで戦ってんだっけ?忘れちまった」
悪気もなく、あっけらかんとして言い放つジュダルに、辺りは顔色を悪くさせた。
ジュダルは、純粋に戦いを楽しんでいる。
まるで、無邪気な子どものように。
その時だった、ジンが突然、ジュダルの防御膜のようなものを突き破る、強烈な攻撃を仕掛けたのだ。
「ってぇ…、んだよぉ」
ジュダルにダメージが与えられたらしく、顔がどんどん歪んでいく。
その後も連続でジュダルに殴りかかるジン。
「ちょ、ちょっとまて!なんなんだよそのジンはぁ!おいチビ!そのジン卑怯だぞ!さっきからお前は自分の魔力を、そいつに与えてないじゃないか!つまりそいつは今、他の奴の魔力で動いてるってことだほ!?そのジンはお前のジンじゃない!」
そう、ジュダルが一瞬アラジンを視界に入れた隙に、ジンが両手を広げ、ジュダルを叩きつぶした。
これは不味い、そう思った時には、私の体は動いていた。
「ジンが…!」
一瞬だった、ジュダルに止めを刺そうとしていたジンが、吹っ飛んだのだ。
「これ以上は、させない」
*2015/12/30