対戦
「…へぇ、チビ、そんなに見込んでる王候補なのかよ、こいつが?ふ〜ん、俺にはそうは、見えねぇけどな!」
ジュダルは杖の先に何やら光を集め、アリババさんのお腹をめがけて放った。
至近距離で直撃したアリババさんは、お腹を抱えて悶える。
「ほら!弱ぇ〜、シンドバット!なんでお前こんなくっだらねぇ奴とつるんでんの?バッカじゃねぇの?!」
ジュダルがアリババさんのことを馬鹿にするたび、アラジンから光があふれる。
その目には決意が滲んでおり、ジュダルと戦うために杖を取った。
「へっ、やる気かよ?戦う気満々みてぇだな、おい!」
「君と戦いたい訳じゃないけど、これ以上僕達に何かするなら止めるよ」
「やめろ!やめるんだ、2人とも!」
「黙ってな、シンドバット、これはマギ同士の戦い、ただの人間は口出し無用、それに今のアンタに俺は止められないね、さっき見てわかってんだぜ?今、金属器、1つも持ってねぇんだろ!」
「ぐっ!」
先ほどのジュダルの目。
あれはもしかして金属器を見分ける目だったのかもしれない。
そう考えているうちに戦いが始まる。
魔力の打ち合いを始める2人を尻目に、これがこの世界の魔力が可視化したものなのか、と感心していた。
だが、ルフの加護があるマギ同士では、それはお互いに打ち消しあってしまうらしい。
なので、とジュダルは魔法で勝負することを提案した。
ようやく、この世界の魔法を見ることが出来るのか。
「これが、魔法…」
魔力というのは、ルフが生み出す純然たる力、先ほどジュダルが杖の先に集めていた光がそうだ。
魔力はそのまま集めて撃っても大した威力はなく、少しものを壊す程度。
だが、ルフにとある命令を与えると、魔法が完成するのだ。
ルフとは本来、この世のあらゆる自然現象を己の生み出す魔力を使って起こしている存在。
つまり、ルフが生み出す魔力が、嵐や炎、雷を作り出しているらしい。
それと似たような現象を起こさせるのが、魔法。
「…めんどくせぇな」
「これが、この世界の魔法なのね」
確かに、アヴィの言う通りだと私は思う。
ルフに命令を与えて、魔法にする、という手間が。
どうやってルフに命令を与えるのかも、魔法を使ったことのない私たちにはわからないが、私たちが持っている能力より、手間があって面倒くさそう。
アラジンはジュダルの魔法に対して、青い巨人、ジンを実体化させて対抗した。
「へぇ、チビ、面白れぇの持ってんじゃん、巨大なジンの体、そんなもん、俺達マギにしか出せねぇもんな…、いいぜ、認めてやるよ、お前のこと!でも、俺の魔法だって、あんなもんじゃないんだぜ?」
ジュダルはゆっくりと杖を上に構えた。
そしてルフに空気中から水を集めさせ、それを巨大な氷に変えた。
「俺の1番得意な氷魔法だ!」
ジュダルはにかりと笑った。
*2015/12/12