2人のマギ


「にしてもさぁ、なんなわけこいつら?ぞろぞろと…」

そういいながらジュダルが振り返った時、アラジンと目が合った。
否、合ったと言うよりは引き寄せられた、とでも言うのだろうか。
アラジンとジュダルの視線が交わった瞬間に、ルフが勢いよく羽ばたいた。


「…あれ?何こいつ、シンドバットよぉ、こいつの周りのルフ、変だよ、こいつなんなんだ?」

そう、アラジンを指さしながらシンドバットさんに問うジュダル。
そんなジュダルに、シンドバットさんは顔を歪ませながら、ゆっくりと渋るように口を開いた。


「…お前と同じマギだよ」

「はぁ〜?!こんなチビがマギぃ?!ウソだろ!?だってマギってのはすっげぇんだぜ!世界を変えるためにルフが送り出す力を使える、創世の魔法使いにして最強の魔力の使者、それがマギなんだぜ!そんなのが俺の他にそうそういてたまるかよ!」

「…彼がマギだから、お前も反応したんだろうが」

シンドバットさんの言葉に、ジュダルは言葉を詰まらせた。
そして一転、くるりとアラジンの方を振り向き、にこりと笑顔を浮かべる。


「ようチビ!俺、ジュダル!お前は?」

「ぼ、僕はアラジン」

「そっか、アラジン、マギ同士よろしくな!」

そう言って握手を求めるために右手を差し出すジュダル、そんなジュダルに戸惑いつつ、アラジンもゆるゆると手を取ろうと右手を浮かせた。
瞬間に、ジュダルの手は拳に変わり、アラジンの左目を勢いよく殴った。


「おいお〜い、こんなどんくさい奴が俺と同じとかまじかよ!シンドバットよ、まさか俺を差し置いて…、こんな奴と組む気じゃないだろうな…?」

「彼は関係ない!この国で偶然出会っただけだ」

「…ならいいけど、そうだチビ、お前が本当にマギなら、他にも王候補を連れてんだろ?1人か2人ぐらいその辺にいんだろ?なぁ、チビ!」

王候補、とは誰のことなんだろうか。
アラジンも戸惑いを辛うじて開いている右目に浮かべている。


「なんだよ、だんまりかよ、いいよ〜、じゃ自分で探すから、よ」

ジュダルは顔を伏せてからばっと勢いよく顔を上げて目を見開いた。
その目は、全てを見通すような不思議な力があり、思わず拳を強く握った。


「みぃつけた!」

ジュダルがそう言って指さしたのは、アラジンの側にいたアリババさんだった。
王候補、とは迷宮攻略者の事なのだろうか。


「あれ?なんだ、俺お前のこと知ってるぞ?お前あれだろ、昼間にアブマドの豚にいじめられてた奴だろ!ぷぷっ、あん時のお前、みっともなかったなぁ!なんか必死こいて喚いてたけど、全然聞いてもらえなくて…しまいにゃウジ虫呼ばわりされて泣いてたよな〜!ほんっとお前って情けない奴!」

「情けなくなんかない!」

そう、響くような、透き通った声で叫んだのはアラジンだった。
その目には強い意志が映っていて、とても綺麗だった。



*2015/12/12


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