敵襲
先ほど隣の部屋から聞こえた声から推測すると、きっとあの声の主がカシムで、アリババを探し出したという所だろうか。
「どうする?」
「倒す」
「了解」
「ふん、何が倒すだ!俺達霧の団は最強だ!」
そう口にしながら部屋の壁を壊し、襲いかかってくる霧の団に、私は手を翳す。
“空力使い”を使い、地面から強風を発生させ、次々に吹き飛ばしていく。
「な、なんだこいつ!っ、うわぁぁ!」
「よし、これでいいね」
誰も居なくなった室内を見て、微笑みなが服についた汚れをたたき落とす。
「流石レベル6に1番近いと言われるだけあるよな」
「馬鹿にしてるの?あんなの10%も力を出してないわ」
「馬鹿にしてねぇって…ホテル内が騒がしいな、どうやら襲われたのはこのホテル全体らしいな」
「ここから移動しよう」
「ああ」
アヴィが“座標移動”を使い、ホテルから数m離れた背の高い民家の屋根へと移動した。
ホテルを見ると、屋上にはうじゃうじゃと霧の団が彷徨いていた。
そこに現れたのはシンドバットさんたち一行。
「待ち伏せしてたみたいだね」
「ああ、こっからどうする?参戦するか?」
「ううん、いい」
私は屋根の砂を手で払ってから座り、ぼうっとホテルの屋上を見る。
欠伸を噛み締めながら空を見上げていると何やら歓声が上がった。
「なに?」
「さぁ」
よく見ると、霧の団の数が物凄く減っている。
しっかり見ておけばよかったと思う反面、ベッドでゆっくり休めなかったので、早く騒動が終わって欲しいと苛付きが募る。
「眠たい…」
「少し寝るか?」
「うん、寝たい…」
寝たいと口にはするが、こんな所で寝ては風邪を引いてしまうし、なにより寝れない。
なのでむすっとした表情のまま、頬杖をついて睨みつけるようにホテルの屋上を見つめる。
「…どうやら、話が終わったみたいだな」
「そう、で、どうなったの?」
「さぁな、ただアリババが何かするらしいぜ」
「そう…」
駄目だ、眠気が限界まで襲ってきている。
何処かで休みたい、そう思い私はゆっくりと立ち上がった。
「どうしたんだ?」
「寝たい」
「ああ、分かった」
アヴィは“座標移動”を使い、私と共にどこかへ移動した。
そこは先ほど私たちがいた室内と同じ作りをしている部屋だ。
「ここは…?」
「さっきの襲撃で奇跡的に無事だった部屋、どうせ誰も来ないし、良いだろ」
そう言ってアヴィはベッドに向かっていく。
私もアヴィとは違うベッドへと体を沈めた。
「弥空は昔から徹夜とか出来なかったもんな」
「睡眠は大切なんだよ…」
そう口にしながらも、私は睡魔に引きずられるように眠りについた。
*2015/12/06