昔話


カシムという霧の団の本当のリーダーの名前が出てきて、この話は始まった。
アリババとカシムという人は所謂親友らしい。
幼い頃から一緒にスラムで育った。
だが、アリババには優しい母が、カシムには傍若無人の父と妹が居たらしい。


「なんて最低な父親なのかしら」

「ぶん殴ってやりてぇな」

その父はカシムや妹を殴る蹴るの暴行を加えたらしい。
だが、そんなある日、その父はどこかへ姿を消し、アリババの母はカシムと妹を引き取ったのだ。
アリババの母は、カシムと妹を本当の家族のように扱った。
だが、アリババの母が病に倒れ、そのまま亡くなった。
残された子どもは力を合わせて生活費を稼いだ。
だがカシムは再び盗みを働くようになったそうだ。


「…アリババさんは、王子だったのね」

「みたいだな」

なんと、話を聞く限りだと、アリババはバルバッドの第3王子らしい。
そこで王宮に引き取られるという話になったのだ。
アリババはカシムに相談した。
だがそこで大喧嘩をし、アリババはそのままスラムを去った。
アリババが王宮で暮らし始めて数年後、アリババがこっそり王宮を抜け出した際にカシムと再び出会ってしまったのだ。
酒を飲みつつ、昔話に花を咲かせる2人。
カシムは酔ったアリババに、王宮への抜け道があることを聞き出す。
そしてアリババをつけて王宮への抜け道を知り、大規模な盗みを働いたらしい。
その騒動により、病で弱っていた王様は亡くなってしまい、怖くなったアリババはバルバッドから逃げ出した。


「なるほどね、カシムって人は相当な犯罪者に成り下がっているのね」

「恐らく、スラムで学んだんだろ、大人の社交術を、それを犯罪に使ってるのか」

その後、アリババはアラジンと出会い、第7迷宮を攻略。
アリババはけじめをつけるためにバルバッドへ帰ったのだという。
だが久しぶりに帰ったバルバッドは荒れに荒れていた、スラムは拡大し、酷い有様だったのだ。
そんな中で王軍と衝突しているカシム率いる霧の団の噂を耳にした。
カシムとけじめをつけるのが先だと考えたアリババはカシムに出会う。
カシムの話をきちんと聞くと、なんとスラムは隔離されていたらしい。
居住区の制限、人と物の出来りの制限、住民の活動制限、つまりスラムの人間は自由に動くことができなくなってしまったのだ。
アリババがスラムを出ていった翌年に病が流行り、広がらないように王都はスラムを閉鎖したのだ。
次々に人が亡くなり、カシムの妹も亡くなってしまったらしい。


「スラムを何とかするために、力を集めて霧の団を作ったのね」

「王宮を襲撃した際に、宝物庫から魔法アイテムを盗んだんだろう」

部下も武器も集まり、国軍と戦えるようになった。
だが、所詮は盗賊、いつかは罰せられてしまう。
そこでカシムは考えたのだ、王子であるアリババが霧の団に入れば賊軍ではなくなる、と。


「…馬鹿馬鹿しい」

「おい、弥空」

「だって、所詮犯罪には変わりないのに、アリババさんは見失っている、犯罪という重さを」

そう呟きながら私は再びベッドに身をあずける。
アヴィはそんな私を見つつ、能力を使って先ほどの穴を塞いだ。


「…俺達が馬鹿馬鹿しいって言えるのは、きっと世界が違うからだろ?」

「…そうね、そうかもしれない、私たちは平和の中で、恵まれた所にいたから、馬鹿馬鹿しいだなんて軽口を叩けたのかも、ね」

私、いつの間にか忘れていたみたいだ。
自分たちがどれほど恵まれた環境にいたのか、幸せな世界にいたのかを。
…馬鹿馬鹿しい、か。
それは今の私にお似合いな言葉だ。
そんな嘲笑を零していると、先ほどとは比べ物にならない大きな物音が地面を揺らした。
部屋の壁が壊され、ぞろぞろと人が入ってくる。


「よぉ、探したぜ相棒」

霧の団のお出ました。



*2015/12/06


BL小説コンテスト開催中
テーマ「禁断の関係」
- ナノ -