正体


アヴィたちの方の豪商の屋敷が襲われたと聞き、私たちは急いでそちらへ駆けつけた。
が、豪商の屋敷へ駆けつけた時には最早日は登り、豪商の屋敷だった物と思われる燃えつきた木のクズがその場に転がっているだけの更地となっていて、どんな状況だったのか、悲惨さが伺えた。


「アヴィ…」

「俺は無傷だ、特に何もしてねぇしな」

アヴィ曰く、怪しげな霧が発生した時点で“座標移動”を使い、少し離れた所で様子を伺っていたらしい。
良かった、アヴィに何も怪我がなくて…。


「霧の団に迷宮攻略者がいるとはなぁ…」

「えぇ、魔法アイテムをいくつか確認しましたが、そのうちの1つは確実にジンの金属器でした、幸い、死人は1人も出ませんでしたが、毎回怪傑アリババのこの炎の壁で逃げられているそうです、国軍は打つ手なしですね」

「しかもそれが、アラジンの友人とはなぁ…」

「そうなんですよ、まさかマギの友人が盗賊とは思いませんよね」

「そもそも、その怪傑アリババはどういう奴なんだ?」

「市民の話によりますと、半年程前から霧の団で活躍を始めた人物だそうです、国庫から奪った物を市民に配る際には必ず彼の名前が使われるので、市民に英雄視されているようです」

「ふん、盗品をばらまいてヒーローか、おかしな話だな…、それほど、この国が荒れているってことか…」

「…とりあえず、ホテルへ戻りましょう」

私の一言により、ホテルへと戻戻ることになった。



▽▽▽



「ふぁ…」

ホテルの部屋へと戻った私は、すぐさまふかふかのベッドに身を投げた。
するとすぐに心地好い睡魔がゆっくりと思考を蝕む。
徹夜で警備してたから、疲れが出たのだろう。
そんな私を見て、苦笑しながらアヴィがベッドに腰掛けた。


「で、これからどうする?」

「ん…?」

「俺、アリババのジンの金属器の能力、この目で見たぜ」

「…そっか、私が探してるジンじゃなかったんだね」

アヴィは無言で頷いた。
シンドバットさんたちの話を聞いていて、何となくだけど違うって分かっていた。
これでまた振り出しか、そう思いつつため息を零した際にふと、ある人の顔が頭をよぎった。


「…まだいるよね、金属器を持ってる人」

「シンドバットか」

「うん、7つの金属器を持っているシンドバットさんの能力、見てないよね」

「だって盗まれてるんだろ?」

そうだった、と私は落胆に身を任せ、更にベッドに沈んだ。
7つもジンの金属器を持っている癖に、盗まれるとはどういうことなのだろうか。
小さくため息を零したその時、隣の部屋からゴォン!と大きな音が聞こえた。


「…何の音?」

「さあな、見てみるか?」

「うん」

アヴィは壁に指先を触れさせ、“座標移動”を使い、小さな穴を開けた。
さすがレベル5、細かい操作もお手の物だ。


「あれ、あの人…」

そこにはアラジンとモルジアナの他に、見知らぬ金髪の青年がいた。


「あいつだよ、アリババ」

「え、あの人が…」

そんな話をしている間に、アリババの話が静かに始まった。



*2015/12/06


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