貧富の差


夜、いくら南国といえども、夜はかなり冷え込む。
私は冷たくなった自身の腕を優しく摩る。
私たちは二手に別れ、霧の団が目をつけそうな所を見張りに来たのだ。
豪商の屋敷の方にはジャーファルさん、アラジン、モルジアナにアヴィ。
そしてこちら側、貴族の屋敷には私とシンドバットさん、マスルールさんで見張っている。
私たちは警備と称して張り込みをしているのだ。


「へっくし、さみー…南東の国でも霧の夜は冷えるな」

「そうすね」

「寒いですね」

「ソラ、マスルールを風避けにしよう」

シンドバットさんは私の腕を引き、マスルールさんの背中へと連れ出した。
シンドバットさんとマスルールさんの間に挟まれた私は身動きできず、されるがままだ。


「ばっか、動くなよ!」

「風避けにしないでくださいよ」

シンドバットさんの声が大きく響いたその時、屋敷の窓がガチャリと開き、ふくよかな体を惜しまず出し、肉をむしゃりと齧っている男性が顔を歪ませながらこちらを睨んだ。


「こら!そこの3人!しっかり警備しろ!まったく…国軍の手が足らずたった3人の警備兵など不安でメシも食えぬわ!」

そう言って部屋の奥へと姿を消した男性。
くちゃくちゃといやらしい咀嚼音がこちらまで聞こえてくる。


「食ってますね」

「暖かい部屋で温かい飯か、良いご身分だな」

そう話していた瞬間、1人女性がふらふらと覚束無い足元でこちらまで歩いてくる。
どうしたのだろうかとシンドバットさんが近づいた瞬間、女性は懐に隠し持っていたナイフをシンドバットさんへ突き出す。
間一髪で避けたシンドバットさんだか、喜んでもいられない。
いつの間にか私たちは囲まれていたらしく、私たちは背中を合わせて状況を把握する。


「霧の団のお出ましか?霧が邪魔で敵の状況が把握できん!」

「了解」

マスルールさんはシンドバットさんのぼやきを聞き取り、すぐそばに生えていた木を根からもぎ取り、それを振り回した。
するとすぐに霧が晴れ、敵の姿が明らかになった。
だが、その一行は霧の団ではなく、スラムに住む人たちだったのだ。


「邪魔をすれば殺す…、やってやる、食べ物を奪うんだ!今日食べさせなければ娘は飢え死にしちまうんだ…!この子で3人目だ、もう国に高い税と一緒に子どもの命を奪われるのは嫌だ!」

「げぇ、スラムのやつらじゃないか!しっし!臭いんだよ、これをやるからどっか行け!」

騒ぎが聞こえたのか、再び窓を開けた男性は顔を歪ませながら食べ掛けの肉を地面へと投げ捨てた。
それを見た女性はすぐにその肉へと手を伸ばした。
それをシンドバットさんが強く手をつかみ、止めた。


「そんなことをする必要は無い、屋敷の中で好きなだけもらってくればいい、だが命だけは見逃してやれよ」

「屋敷の人たちは不安でご飯も喉を通らない見たいだから…、この子に、お腹いっぱい食べさせてあげて」

私は女性の細い腕にだかれている、やせ細った子どもの頭を優しく撫でた。
女性たちは頷いてから、貴族の屋敷へと入っていった。


「いいんすか?」

「だって俺達、霧の団を捕まえるって約束しただけだし…、この国は、もうダメかもな」

シンドバットさんは月を見上げながらそう呟いた。
私はその呟きに何も返せず、静かに瞼を閉じた。



*2015/12/03


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