シンドバッド
人気のない橋の下へと早足で移動した私たちは、アラジンにもう一度笛から青い巨人を出して貰った。
それを間近で見たシンさんは、驚きに目を見開いた。
「アラジン、君もマギなのか…」
「君も?おじさん、他にもマギを知っているのかい?」
「ああ、知っているとも、別に仲良しという訳ではないがね…」
マギ、とは何なんだろうか。
アラジンのことをマギ、と呼んでいることから、きっと何かの役職かなにかなのだろうか。
「おじさんって、一体何者なの?」
「そうか、君がマギなら明かそう、今まで隠していて悪かったね、俺は…シンドバットさ」
シンドバット。
あ、だからシンさんなのか。
…だから、何だと言うのか。
シンさんがシンドバットという名前だからと言って、何があるのだろうか。
私とアヴィは分からず、首をかしげていた。
私たちだけが分かっていないのだろうか、と思っていたのだが、アラジンやモルジアナも頭に疑問符を浮かべていたので、どうやら分かっていない見たいだ。
「え!?し、知らないの?」
「どこかできいた…ような気はするよ…?」
「思い出してごらんよ!シンドバットの伝説を…!」
「シンドバットの伝説…?」
「え、ソラも知らないのかね?!」
シンさん、改めてシンドバットさんは必死な形相で私たちに詰め寄ってくる。
が、そもそもこの世界の人ではない私たちにそんなことを言われても分かるはずはなく、曖昧に首をかしげた。
「幾重にも航海を重ね、世界中7つの海全てを冒険した男!世界数々の迷宮を攻略情報のし、自らの国をうちたてた、攻略した迷宮の数はなんと7つ!」
迷宮、その言葉に私たちは驚きを顕にした。
まさか、こんな近くに迷宮攻略者がいたとは。
「第1迷宮バアル、第6迷宮ブァレフォール、第16迷宮ゼパル、第34迷宮フルフル、第41迷宮フォカロル、第42迷宮ヴェパール、第49迷宮クローセル!7人のジンの主、七海の覇王、それがシンドバットだよ!」
「す、すごい…!けど僕にはよく分からかいよ」
「え、わからないの?マギなのに?!」
「うん、僕にはまだわからないことが多いんだ」
そう言いながら頭を掻くアラジンに、そうかとシンドバットは頷いた。
だが、私の心情はそれどころでは無かった。
こんな所で、しかも複数のジンの金属器を持っている人に出会えたのだから。
「シンドバットさん、その、金属器はどちらに…?」
「あ、それは、まぁ、今は置いといてだな」
金属器を見せてもらおうと思ったのだが、シンドバットさんは苦笑しながらも話を逸らした。
7つの持っているのだ、もしかしたらと淡い期待に胸を泳がせながら、耳を傾けた。
*2015/11/29