不審者


あの宴から5日後。
歩いてバルバッドへと行ける距離まで乗せてもらい、隊商とお別れをした。


「じゃあ行こっか、モルさん」

「はい…」

隊商とお別れをしたアラジンとモルジアナがこちらへと歩いてきた。


「お別れは済んだ?」

「はい」

「よし、じゃあ行くか」

アラジンとモルジアナは並んで足を進める。
私とアヴィも、アラジンとモルジアナの後ろから足を進めた。
正直、どこにどう行けばいいのか分からなかったので、2人が一緒に行こうと誘ってくれて本当に良かった。


「モルさんは、故郷の船に乗るためにバルバッドを目指しているんだよね」

「はい、それとあなたとご友人に会いたいと思っていました、お礼がしたくて…」

「お礼?」

「…ねぇ、アヴィ」

「ん?」

アラジンとモルジアナが前で話している最中、私はアヴィに静かに話しかけた。
アヴィは視線はそのままの状態で、返答をした。


「あの、チーシャンでも思ったんだけど、ここは異世界ではなくて、タイムスリップ、なんて考えは出来ないよね」

「ああ、それはないな」

やっぱりか、と思いつつ、小さくため息をついた。
タイムスリップだとしても、ジンの金属器や迷宮なんて過去にも、きっと未来にも出てこないだろう。


「だいたい、ジンの金属器ってどんなものなのかしら…」

「さぁ、金属器っていうくらいなんだからよ、金属で出来た剣とかじゃねぇのか?」

様々な予想や推測を交えて私たちはジンの金属器がどんなものなのか考えていた。
まぁ、全ては迷宮を攻略したアリババという青年に会えば解決するのだが。
この道を行けば、会えるのか。
そう思いを馳せつつ、また一歩踏み出した瞬間、私たちの足は止まってしまった。


「やぁ、君たち!今日はいい天気だね」

そう言いながら片手を上げる男性。
だがその男性は生まれたままの姿をさらけ出しており、鍛え上げられた筋肉が太陽の光を浴びてその影をくっきりと顕にしている。
局部だけは1枚の葉っぱで隠されていたが、一糸まとわぬ姿を見た私たちは、言葉も出なかった。
それどころか、赤面せざるおえなかった。


「モルさん危ない!下がって!モンスターかもしれない!」

「いや、ただの不審者だ、俺が直々に…」

「いえ、私に任せてください」

「え、いや!違うんだ!話を聞いてくれ!」

その一糸まとわぬ姿のままで、こちらへと歩いてくる男性。
段々と近づいてくる男性の姿が視界に入る度に、驚くほど血行が良くなり、頬に赤みが増す。
それを見られたくなくて、両手で顔を隠す。


「ソラさん、大丈夫ですか…?」

「だ、いじょうぶ…」

「…目の毒だな、早く消えてもらうか」

「ちょ、本当に待ってくれ!」

あまりにも男性が懇願するので、私たちは武器を収めた。
アラジンは男性に自分の服を貸してあげたらしい。
アヴィの服もあるのだから、アヴィの服を貸したらどうかと小声で提案すると、気にくわねぇから嫌だ、と子どものような答えが返ってきた。
顔を覆っていた手を取ると、男性はパツパツだが衣服を身につけていたので、私はほっと、ため息をついた。



*2015/11/23


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