ありきたりな音色ではなく、結婚式などでよく聞かれるような、そんな少し高級感が溢れる鐘の音が校内に響き渡り、大きく木霊した。
本日最後の授業を終え、私は大きく体を伸ばした。


「ふぅ…」

「お疲れ様」

「ありがとう、くるちゃん」

くるちゃんが帰り支度を始めたので、私も机の中に入っていた授業道具を鞄へと詰めていく。
今日はまだ、片付け終わっていないダンボールの山をどうにかしなければ、と思いつつ、鞄のチャックを閉めた。


「そう言えば、那奈の家はどちらなの?」

「私の家?駅の方に歩いて行けば着くよ」

「あら、じゃあ途中まで一緒に帰れるわ」

ふわりと嬉しそうに微笑むくるちゃんに釣られ、わたしも微笑んだ。
だが、ふと、何時ものくるちゃんの帰宅時の後継を思い出した。
何時もは校門の所に車が止まっており、その車で帰っていたくるちゃん。


「くるちゃん、歩きだっけ?」

「歩きたい気分なのよ」

「…くるちゃん大好き!」

「ふふっ」

どうやら、私に合わせて徒歩で帰ったくれるらしい。
なんとも優しいお友達を持ったものだ。
そう思いつつ、私とくるちゃんは昇降口へと向かった。



▽▽▽



昇降口から出るや否や、きゃー!と甲高い複数の女の子たちの声が木霊した。
私はその声に驚いてしまい、びくっと体を揺らした。
びっくりした…。
立海でも散々聞きなれていたのに、場所や環境が変わるとその慣れも意味の無い物なのだな、と痛感した。


「相変わらず五月蝿いわね…」

「…もしかして、テニス部の?」

「そうよ、まったく、生ゴミに群がる蠅みたいだわ」

「くるちゃん…」

くるちゃんはその柳眉を寄せ、さらりとテニス部の事をゴミ扱いした。
想像したらちょっと面白くて、笑みをこぼしてしまった。
ちらりと、その甲高い黄色い声が木霊している、恐らくテニスコートがあると思われる方向を見る。
精市から、氷帝学園のことを少しだけ聞いていた。
なんでも彼らも全国区レベルのテニスをし、強豪校だ、と言っていた。
彼らはどんなテニスをするのだろうか、少しだけ興味が湧く。


「…気になるなら行ってみる?」

「え、…ちょっとだけ、良い?」

「良いわよ」

「じゃあお言葉に甘えて…」

くるちゃんがテニスコートまで案内してくれるというので、お言葉に甘えて連れて行って貰うことにした。



▽▽▽



段々と大きくなる甲高い黄色い声に、耳を塞ぎたくなる。
テニスコートが見える前に、そのテニスコートをぐるりと囲むようにように女の子たちが群がっていたのを見つけ、きっとあそこがテニスコートだと察した。
私たちは石造りの階段の上の給水所から、テニスコートを見渡す。
テニスコートの中には、部員が打ち合いをしていた。


「凄い…」

さすが全国区レベル。
全く、あの王者と呼ばれた立海に引けを取らない。
彼らの練習を見ていると、ふと、立海のテニス部の皆のことが頭に過ぎった。
皆、元気かな…。
気になった私は、ブレザーの外ポケットに入っていた携帯を取り出し、メール作成画面を開く。
実は、レギュラーの皆に、私が氷帝に来たことは疎か、そもそも転校することすら伝えていなかったのだ。
誰にも伝えていなかったが、早く伝えなければ皆心配してしまうだろう。
そう思い直し、携帯を操作してメールを作成する。
誰か1人に送れば皆見てくれるよね、誰にしようかな。
決めた、あの人ならきっと携帯を見てくれるし、そう思いメールを送信する。


「くるちゃん、もう良いよ、ありがとう」

「じゃあ帰りましょうか」

「うん!」

私とくるちゃんは再び、談笑を交えながらテニスコートから踵を返し、校門へと向かっていった。
その様子を、見られていたとは知らずに。


「…あれは西園寺と佐倉?」



*2012/11/24
(修正)2015/12/23




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