卒業試験が終わり、いつも通りの翌日を迎えた。 いつもと違うのは、授業がなくなり、結果が出るまでは自由に過ごしていて良いという点だ。 私は起きてからすぐにテイトたちの元へと向かった。 2人とも既に起きており、他愛も無い世間話を楽しんでいると、テイトが唐突に声を上げた。 「あ、シグレ先生に報告書を出し忘れてた!」 「あ、私も!」 「今から出しに行くか」 「うん…!」 私は急いで部屋に戻り、報告書を抱えて飛び出した。 そしてテイトと共に、シグレ先生の元へ急いだ。 ▽▽▽ 「急がなきゃな…」 「うん」 廊下を早歩きで急いでいると、ふと男性の低い声が辺りに響いた。 「Aグループのテイト=クラインはやはり素晴らしい才能の持ち主です」 テイトの話をしている…? 私たちは互いに顔を見合わせてから、扉の影に隠れながら会話を盗み聞く。 「このままいけばやはり彼がミカエルの瞳の候補生に…」 「しかし、敵国ラグスとの戦争であの石は消えてしまったのでは?」 「ラファエルが反応している、石は今でも必ずあるはずだ」 「だがラグス王族全ての身体を解剖しても石はなかったのだ、まだ血族を見落としているかもしれぬ…、本来ならこのラグス国王の首飾りに付いているものを…」 シャラ、と音を立てながら、男性はとある首飾りを掴んだ。 あの首飾り、何処かで…。 テイトにも聞いてみようと思い、隣の扉の影に隠れているテイトを見るが、その顔色はとても青く、頭を抱えている。 「テイト…?」 「大丈夫、だ」 小声でそうやり取りをするが、全然大丈夫そうに見えない。 気配を消し、物音を立てぬようにテイトの傍に近寄り、背中をなでる。 「そういえば、ウリエルの指輪と呼ばれる代物も存在するんですよね?」 「ああ、その通りです、先の戦争の時には確かに、ラグスにあったと言われていたのですが、戦後に調べてみても何処にもなくて…」 「ウリエルの指輪とはなんですか?」 「ウリ、エル…?」 どくんと、心臓が不気味なほど大きく跳ねる。 何故だろう、よく分からない感情に襲われる。 ウリエルの指輪とは、何? 「ウリエルの指輪、ラファエルとミカエル、それぞれの瞳に語りかけることが出来る巫女と呼ばれる一族のみが身に付けることの許される代物で、その指輪を駆使すれば、その石の力を使うことが出来るとか…」 「何だと?そんな物が存在するのか…」 どくん、どくんと心臓が跳ねる。 気持ち悪い、怖い。 ぐらりと視界がゆがむ。 頭の中に見知らぬ景色がよぎる。 こんなの知らない、何なんだこの映像は。 「、テイト…?」 ふと、テイトが立ち上がる。 どうかしたのだろうか、テイトに問いかけようとした瞬間、テイトの姿が消えた。 *2015/12/27 |