試験


「はーい、それでは卒業試験を始めます!10人ずつに別れてください」

卒業試験当日。
生徒達の話し声が飛び交う中、先生の声がよく響いた。
卒業試験開始の声を右から左に聞き流しながら、小さく欠伸を漏らす。
ふと横を見ると、テイトとミカゲも目の下に隈を作り、どこか気だるそうな表情をしている。


「テイト、ミカゲ、大丈夫…?」

「ああ、なんとか…」

「あんなに遅くまでやらなきゃ良かったな…」

ミカゲの言葉に、私は苦笑を零した。
中庭でザイフォンを駆使して手合わせをしていた私たちなのだが、その最中にミカゲがテイトに言ってはいけない言葉をザイフォンで地面に打ち込んだのだ。
その言葉に激怒したテイトにより、真夜中の鬼ごっこが始まってしまったのだ。
自業自得だ、と思う反面、ちょっと楽しかったなと昨夜の鬼ごっこを思い出す。


「Aチーム入場!」

私たちはAチームに振り分けられていたので、呼ばれるがままに厚い金属の扉の奥へと進む。
生徒達は緊張した趣で部屋の中へと入る。
Aチームのメンバーは私、テイト、ミカゲ、シュリ=オーク、そしてシュリの取り巻きたちを含めた10人だった。
見知った顔ばかりで喜べばいいのか、悪いのかは分からない。
そんな私の心中など知らず、先生がにこりと笑いながら赤いレバーを下げる。
すると鉄格子がゆっくりと上に消えていき、ニヤリと口の橋を釣り上げ、下賎な笑みを浮かべている、私たちの背丈よりも数倍大きい囚人が現れた。


「それでは始めます、仲間を見捨ててはだめですよぉ」

「へへっ、ビビるなよ、あんなの先コーかわ作った訓練用の幻術だろ?」

1人の生徒が見栄を張り、そう言い放ちながら小石を指で弾き、囚人に当てた。
勿論幻術などではない囚人の額に当たり、囚人は睨みを効かせながらも口を開いた。


「ほう、今年のガキは威勢が良いな、楽しませてくれよぉ…?」

「ひっ…、ほ、本物だ!」

「ほらほら、今まで学んだことをちゃんと応用して皆で力を合わせないと、本当に殺られてしまいますよ?」

先生はにこやかに頑張ってね、と言葉を紡ぎ、部屋から出ていった。
試験開始のコールが鳴り響いた瞬間、卒業試験の始まりだ、とでも言うかのように1人の
とで生徒がガラス張りの壁に打ち付けられた。
図体が大きい割に合わず、俊敏な動きをする囚人を見て、緊張が深まる。


「あーあ、チンタラしてんじゃねぇっつーの!俺様はお前らを倒すごとに、服役期間が短くなるんだぜ!」

囚人は高らかに笑いながら、その重たい拳を叩きつける。
なんとか攻撃を交わし、囚人の動きを観察する。
早い上に力もある、けれども知性はそこまでない。
先程からワンパターンの攻撃しか行っていないが、それでも倒される生徒はいる。
気が付くと、残りは私、テイト、ミカゲ、シュリ=オークしか残っていなかった。
シュリ=オークは次々に血塗れになる生徒達を見て泣き叫び、ガラス越しに無様に助けを求める。
囚人にしてみれば、いい的だ。
シュリ=オーク目掛けて、囚人は拳を振り上げた。


「危ねぇ!」

そんなシュリ=オークを助けたのはテイトだった。
普段、シュリ=オークに嫌な思いをさせられていると言うのに、躊躇なくシュリ=オークを助けたテイト。
矢張り、テイトは優しい人だ。


「テイト、キアラ!」

ミカゲの合図を聞き、私たちは一斉に囚人の腕の骨を粉砕する。
痛みで動きが鈍くなった所を狙い、拳を打ち込む。
そしてすぐにテイトが囚人の首にザイフォンを発動した。


「降参しろ、動けは殺す」

囚人はテイトの言葉に動けなくなり、歯を食い縛る。
すると試験管の先生が冷静に、テイトの行動を戒める。


「試験はまだ終わっていませんよ、私は殺しなさいと言ったはずですよ」

「コイツは本当の敵じゃない、殺す必要なんか…」

テイトの言葉を遮るように、鈍い音とともに赤が舞った。
生臭い鮮血の匂いが鼻腔を刺激する。
テイトの表情は驚きに満ちている、ということはテイトがやったのではない。
では誰か、ガラス張りの壁を見ると、こちらを絶対零度の視線で見つめている軍人がいた。
あの人だ、そう思った瞬間、背中に冷たいものが走った。



*2015/12/20



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