何だかんだ言って、結局抵抗なんか出来ないんです。




「アルエちゃん、チューしよ」
「いきなりどうしたんですか」
「したくなったの!」
「仕方ないですねぇ。…誰かに見られるかもしれませんから、ほっぺたにだけですよ」
「えー、そんなのチューじゃないわよー」
「変わりありませんって。じゃあ、レイヴンさんが言う‘チュー’ってどんなのです?」

あ、ついつい言ってしまった。
こんなこと言ったら絶対…。

「こんなの」

にんまりと笑って、レイヴンはアルエの腕を引き、唇へ口付ける。
抵抗をされてしまう前に舌を口腔に入れ、更に逃げられないように後頭部を押さえてしまう。

「う、んぅ…ッ」

いつもながら、厭らしいキスだ。
これだけでイってしまう自分が情けない、なんてことは少しだけ思うが、キスの仕方が上手すぎるだからなんだと思う。
少なくとも、自分にはそう言い聞かせている。

漸く解放されると、相変わらず目の前にいるおっさんはにやにやと笑っている。

「アルエちゃん、大好き。愛してるぜ」

お決まりの文句。でも、この言葉が一番好きだったりする。

「…私も、大好きです」
「改めて言われると照れるわねー、もう離してやらないわよ?」

なんだか嫌な予感。

「おっさん、もうだめ。我慢出来なくなっちゃった」
「元気ですね…」
「アルエちゃんが相手だからよ、きっと」

ああ、そんなことを言われたら。



――益々この人から離れられなくなる。



キスしようよ

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