あれから20年

20年ぶりに当時の2人を撮影していたカメラマンの1人が、この地を訪れました!所々変わっている町並みですが、懐かしい空気が舞い込んできます。まず、訪れたのは例のケーキ屋さん。今でも健在で、町の人から愛されているようです。ケーキ屋さんの中を訪れると、見慣れた顔が2つありました。

「こんにちは。お久しぶりです」
「あらー、こんにちは!」
「こんにちは!」

あきらくんのお母さんとなまえちゃんのお母さんでした。相変わらず、お綺麗!!

「今日はお2人で?」
「そうなんです。ケーキを買いに!!」

幸せそうな笑みを浮かべたお2人が見つめる先にあるのは、チョコレートケーキ。大きさ的に言えば、あの小さかった2人が運んだ物よりも倍近くありそうです。プレートに施された文字は、

<<えー!!?うそ、まさかまさか??>>
<<きゃあーVv>>

"あきら なまえ 結婚おめでとう"







英くんと名前ちゃんは、同じ小学校、中学校、高校に進学しました。大学だけ別だったようです。そんな2人の馴れ初めを聞いてみると、お2人のお母さんは首を傾げます。

「実は…2人とも教えてくれないんです…」

不服そうな顔をしたのは名前ちゃんのお母さん。その表情は、拗ねてしまった時の名前ちゃんによく似ています。

「まあ、仕方ないんじゃない?恥ずかしいのかしらね」

涼しげな顔をしているのは英くんのお母さん。こちらも、当時の英くんを思い起こしてくれるかのようです。今、2人は新居に引っ越して、2人で暮らしているそうで、特別に、その場所を教えてくれました。

「もし、良かったら聞いてみてください!」

<<身内に教えていないことを、我々に教えてくれるのか!?>>
<<名前ちゃんのお母さん、余程気になるんだね…>>







ピンポーン

「はーい!」

<<なかなか良さげなところに住んでるやん!>>

教えていただいた住所を頼りに訪れると、キレイな女性が顔を出しました。後ろから「名前、ちゃんと確認してから開けて」と男性が咎める声が聞こえてきます。

『あ、すみません、テレビ○○の者なんですが…』
「あー!はい!聞いてますよ!」
「もう、名前」

バタバタと慌ただしく出迎えてくれた名前ちゃんを見た英くんは、呆れたようにため息を吐いています。ようやく2ショットを捉えました!

<<わー、美男美女!>>
<<面影あるなー>>

2人に当時のことを話すと、真っ赤な顔をさせたのは名前ちゃんの方でした。どうやら、当時と立場が逆転しているようです。

「小さい頃の名前だー」
「……うん」
「生意気言ってるね。でも、可愛いね」
「……英も可愛いよ?」
「名前には負けるでしょ」
「……うん、いや?」
「どっち??」

ふふっと微笑み合う姿は、相変わらずのようです。そして、小さい頃の名前ちゃんが英くんにチューをして、2人のおつかいを締めくくったのを見終わった途端、急に名前ちゃんが立ち上がって、奥の部屋へと走って行ってしまいました。

「あー…残念」

そう言った割には、残念そうな顔をしていない英くん。悪戯っ子のような笑みを浮かべています。

「多分、しばらく戻ってこないと思いますよ」

悪びれも無く言われた言葉に、スタッフは少し肩を落としましたが、残ってくれた英くんにお話を聞くことにしました。まずは、お2人のお母さまが気にされていた2人の馴れ初めの話を振ってみます。

「……いつからって言うのが無いんですよね。気づいたらって感じです」
『気づいたら?ですか?』

<<なんじゃそりゃ!?>>

「付き合おうとか言ってないんですよ。お互いが隣にいるのが当たり前だったので」

<<そんなことあるんか?!>>

『いつから名前ちゃんのことを女性として見るようになったのか?ということも、分からないんですか?』
「あ、俺は中学からです」

その問いには即答してくれました。英くんは、中学時代の部活で部員と揉めたことがあるそうです。その時に、いつも英くんの味方をしてくれたのが名前ちゃんで、その時から特別な存在として意識するようになったとか。

「英ー!恥ずかしい話しないでー」
「えー?嫌ならこっち来れば?」
「む!り!」

どうやら聞き耳は立てている様子の名前ちゃん。

<<可愛いな、おい>>

『可愛いですね』
「……まあ」

<<あ!いま、ムっとした>>
<<人妻やぞ!しかも、旦那を目の前にして言ったら駄目でしょ!>>

告白はしていないものの、スキンシップは全て英くんからしたそうです。なんだかんだ嫌がらなかった名前ちゃんに、これはイケると押しまくってここまで辿り着いたと、悪い笑みを浮かべる英くん。

『最後にプロポーズのお言葉を聞いてもよろしいでしょうか?』

残念ながら、それには答えてくれませんでした。どうやら、2人だけの秘密なようです。名前ちゃんからは、何の話も伺えませんでしたが、美味しい手料理をご馳走になりました。栄養士になったという名前ちゃん。栄養バランスも考えられたご馳走は、疲れたスタッフを癒やしてくれました。もう少し、健康に気をつかって生きようと思います。

<<何の宣言や!?>>

英くん、名前ちゃん、末永くお幸せに!



20210204







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