Distance

懐かしい場所に私たちは再び訪れました。あの日の女の子はどれくらいキレイになっているのでしょう?と、そんな気持ちが抑えられないスタッフは、まず、名前ちゃんのご実家に足を踏み入れました。ところが、表札が苗字ではなくなっています。あれ?と首を傾げていると、その横を偶然、賢二郎くんのお母さんが通りました。

「どうかされましたって、あら?」
「お久しぶりです!」

なんと、あの後、名前ちゃんのご家族は、お父さんのお仕事の都合で転勤したそうです。賢二郎くんと名前ちゃんは、別々の小学校、中学校に進学したそうです。

「では、それ以来…?」
「ふふっ。会ってなかったんですけど…やっぱり、運命ってあるんですかね?」







賢二郎くんのお母さんからの情報を頼りに、とあるマンションを訪れました。

『はい…?』
「あ、○○テレビのものです」
『ああ、どうぞ』

無愛想な物言いに戸惑いを覚えつつも、部屋の中に足を踏み入れます。ようやくカメラが、そんな男性のお顔を捉えました。そうです、こちらのクールな男性が賢二郎くんです。

「すみません。名前さんは寝てるので静かにしてもらっても良いですか」

お話は、俺がしますので。知的な雰囲気を漂わせる彼に、頷くスタッフ。鋭い目力に射殺されそうです。賢二郎くんによると、名前ちゃんと賢二郎くんは、幼稚園を卒業後に別れてから10年の月日を経て、高校の部活で再会したんだそうです。

「ええ?それじゃあ、高校で付き合いはじめたんですか?」
「いいえ」

高校時代は、学業と部活の両立が大変で、恋愛に時間を割く余裕がなかったという賢二郎くん。対する名前ちゃんは、美人で人当たりも良いのでモテたらしく、当時再会したときには既に彼氏がいたそうです。要領も良いので、部活も学業も恋愛も両立し、青春を謳歌していました。しかも、賢二郎くんのことを覚えていませんでした。賢二郎くんも賢二郎くんで、他の女の子と付き合っていた時期もあったそうです。しかし、賢二郎くんは初恋の名前ちゃんを諦めることができず、大学時代に名前ちゃんが彼氏と別れたという話を聞いた途端、猛アタックをしたそうです。

「そう簡単には、いきませんでしたけど」

医学部に進学した賢二郎くんは、とても多忙な日々を極めていました。そして、それは名前ちゃんの方も同じだったようです。名前ちゃんも美大に進学し、忙しくしていました。なかなか時間の取れなかった2人。不器用な賢二郎くんでしたが、それでもなんとか時間を作って、名前ちゃんにアプローチし続けました。

__大きくなって、なまえちゃんのこと守るから

「今思えば、あの経験があったから、この職に就いたのかもしれませんね」

名前さんは、覚えていないんですけど。そう言って穏やかな笑みを浮かべる賢二郎くん。きっと、とても素敵なお医者さんとして、あの日の名前ちゃんのように苦しんでいる人を助けているのでしょう。

「幸せそうですね」

その言葉に、身を引き締めた賢二郎くん。

「……守るものが、増えるので」

今、名前ちゃんのお腹には新しい命が宿っているそうです。悪阻が酷いらしく、夜も眠れない日が多いという名前ちゃん。久しぶりに休みの取れた賢二郎くんが、つきっきりで看病して、少し症状が落ち着きを取り戻したそう。そして、先程ようやく眠られたらしいです。それを聞いた途端、スタッフは退散することにしました。


半年後、2人の間には、賢二郎くんに良く似た男の子が生まれたそうです。名前ちゃん、賢二郎くん。幸せで温かな家庭を築いてくださいね。



20210208






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