ロミオはジュリエットを見ない | ナノ

▼04



「武力蜂起…!?」

「そりゃ穏やかじゃないわね」



普通はこの反応か…。と思いつつマグナスとヒューゴを見る。

武力蜂起の事やその残状を聞いても表情動かさずのやつらとは…死傷者と現在の状況を話すヒューゴとマグナスとは大違いだ…。

まぁ、マグナスは客員剣士…任務で慣れてる、ということもあるだろうけど。

兵士、しかも客員剣士となればそんなこと日常茶飯事だろうから


「アルメイダ以北で厳戒態勢を敷き神殿は現在封鎖中だ。死傷者も相当数出ている。軍を派遣し大部分の鎮圧には成功したが…首謀者である大司祭グレバム・バーンハルトならびに数十名の部下の逃亡を許した。…神殿にあったある重要なものを強奪してな」


陛下がわずかに眉間にしわを寄せた。がすぐに元の表情に戻
る。

かくいう僕も少しだけ表情を変えそうになってしまった。

ヒューゴは僕たちの背後に背を向けている状態、マグナスたちも表情を変えていないことから気づかれてはいないだろう、

はぁと心の中で溜息を吐く。自分の無表情さ…というか鉄仮面さには自覚があるしばれていないということもわかっているがどうしても気を張ってしまう。
重要なものとは?と問いかけるマグナスに対し眼鏡のブリッジを押し上げずれていた眼鏡を元の位置へ戻したヒューゴ。


「何分国家機密を孕むものなのでね、それを話すにはまず君たちと取引をしたい。…というのも、この件の解決にはソーディアンの力がどうしても必要でね。」

「私たちがソーディアンマスターだと知った上での話…ね」


その話をきき口元に小さく笑みを浮かべる黒髪の女性…罪人の一人、ルーティ・カトレット。

その頬はすこしひきつっており、見栄を張っていることが見え見えだ。
だが強欲の魔女、と悪名高い彼女はふんと小さく鼻で笑ってその動揺を隠し、ヒューゴを見据える。


「取引っていうからには、相応な対価を期待していいわけ?」


ああ、ドライデン様がいたら憤怒するだろうなと心の奥底で思う。彼は根っからの軍人気質なまじめ人間だ、この発言を聞いたら「貴様、罪人としての自覚が足りないのか!」と怒鳴り狂うだろう。

いなくてよかった、一度切れるとなかなかおさまらない彼の怒りを鎮めるのはなかなかの重労働だし。

カトレットのその発言にふっと笑みを浮かべるヒューゴ。


「憂いなく働いてもらうためだ、協力は惜しまんよ。成功の暁には減刑と報酬を王にお約束いただいている」


先程ヒューゴが陛下に提案し、陛下も頷いた約束事を口にするとぴくりと反応した罪人たち。

…やはり、減刑と報酬というのはでかいだろう。これなら確実に連れる…はずだ、多分だが。


…ほら、ぴくりと反応した。予想通りだ。

だがそれだけやっても即答しない罪人たち一行を横目に見たマグナスは冷たい瞳を細める。


「…犯罪者のこいつらに拒否権などありません」

「ちょっ、なんであんたが決めてんのよ!」


かっとそういうカトレットに対し金髪の男は冷静になだめる言葉をかける。


「いいさルーティ。とりあえず聞かせてもらおう」


それを聞いた陛下の数歩前にいるヒューゴは眼鏡を一度だけ上げる。


「…ふむ、では話そう。」






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