「あら」
「?」
どうかしたのか、そういって私の近くへ寄ってくる彼にふふ、と小さく笑みを浮かべるだけの私。
それにさらに首をかしげる彼は、それを見るように私を上から見上げる。
あら、また貴方身長伸びたんじゃない?というとむすっとして話をそらすなという彼。
体は大きくなっても変わらないその反応にくすくすと笑いながら、内緒、といって手に持っていたそれをはいっていた箱へとしまった。
それにさらに不機嫌になった彼は私を後ろから抱きこむ。
…こういうところは変わったわね、昔はこんなふうに私を抱きしめてくれなかったもの。
「僕に隠し事か?」
「隠し事なんて大したものじゃないわ。多分あなたは覚えていないだろうから、掘り起こさないだけ」
「何故そうきめつける?」
「だってあなた、仕事と戦闘とか勉強関連以外忘れっぽいじゃない」
約束忘れて仕事入れたこと、忘れてないわよ?そういいじろりと見上げるように睨みつけるとうっとうろたえる彼。それに小さくため息を吐いた。
それでも私の誕生日などは覚えててくれているのだが…それ以外がどうも抜けているというかなんというか。
前なんてルーティとヒューゴさんと4人でご飯を食べようっていってたのにその前日に仕事を入れるんだもの。最初聞いた時は驚いたわ。
「あれは仕事が忙しくて…!」
「はいはい」
わかってるわよ、と言いながらプリンを掬い彼の口元へ突っ込む。
最初はいきなりに驚いていた彼だが、プリンだと知ると黙ってそれを口に含んだ。
すっとスプーンを抜き取り私は笑う。
「どう、おいしかった?」
「お前が作ったプリンなんだ、上手くないわけないだろう」
じっと見つめられながらそう言われる。昔と比べて直球ドストレートとも言えるその言葉にほんのりとほほを赤らめた。
…やだ、そんなに見つめないで、私が照れてるのがわかっちゃうじゃない。
あまりにじっと見てくるから持っていた箱で顔を隠すと、くすくすと今度は私が彼に笑われてしまった。
それにもうっと言いながら抜けだそうとするところんと箱が私の手から滑り落ちる。
あっ、とおもったらそれは彼の手に渡ってしまった。
ちょっと待って…そういうと同時に開けられる箱。
「…これは」
「…ーっ」
出てきたのは、彼と私が16歳の時彼が送ってくれたシルバーのリング。
正式に籍を入れる前に彼から新しい指輪をもらったのだが、当時素直じゃなかった彼が精いっぱいの勇気を振り絞って送ってくれた思い出のリング。
どうにかしてとっておきたかったのだ。
だからこうしてこっそりしまっていたのに…ああもう恥ずかしい。
「とっておいて、くれたんだな…」
「あ、あたりまえじゃない…貴方がくれたものだものっ」
大切にしないわけないじゃない!そういうと降ってくる甘い口付け。
ちゅ、ちゅ、と小鳥が囀るかのように口づけを交わしていると、とすっとソファへ押し倒される。
上から私を見下ろすかのように見つめる彼の…エミリオの瞳に生理的に流し瞳にたまっていた涙が頬を伝った。
その体制でエミリオは私をぎゅっと抱きしめた。
私はそれを受け入れ、小さく笑う。
「…ねぇ、エミリオ」
「ん?」
今日何の日だと思う?そういうと彼は私を押し倒したまま首をかしげた。
そっとその体制のままカレンダーを指出す。
「今日はね、11月22日…ゴロ合いで言えば、いい夫婦の日らしいわ」
だからね、エミリオ
「私もお仕事に暇入れてもらったから、あの、その…」
頬を染めながら言いにくそうに下を向くと、再びキスをされる。
それ以上言わなくていいと言いたげなそれに、私は小さく幸せそうに笑った。
11月22日!(いい夫婦の日!)
(その翌日私とエミリオは、しばらくいろんな痛みに苦しむことは、今の私たちには知らないことである)
あとがき
これが私の(甘甘具合の)限界だああああああああああ
書いてるときすっごい砂糖吐きそうになったのは内緒です…。
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